2010. 7/16
今日は、シルバーパス3322mを越えて、VVR(Vermillion Valley Resort)という宿泊施設を目指す。この施設は、LAKE THOMAS A EDISONという大きな湖を、水上バスで越えた先にある施設で、JMT、PCTを歩くハイカーの支援をおこなっている。事前に、補給用食料をこの施設に送っておくと、現地で受け取る事が出来るのだ。僕らは今回のハイキングで、トゥオルミーメドウと、このVVRの2カ所に食料を送っておいた。実際歩いてみると、前半部分は食料の調達も現地で十分に出来るので、2カ所も送る必要は無かったかもしれない。
この区間のトレイルでは、僕たちは2つの問題を抱えていた。一つは、VVRへ行くための水上バスの出発スケジュールが、午前中9:45と、夕方16:45の2便しかなく、僕たちは、夕方の16:45までに水上バスの出発場所に着かなくてははならない。もう一つは、シルバーパスの先の川の渡渉が困難であると事前に情報を得ていていた事だ。もし、間に合わなければ、今回のハイキングの行程、スケジュールの見直しを考えなくてはならない。
僕たちは、出発時刻に間に合わせる為に、いつもよりも早く起きた。外は雨だった。天気予報が浮かぶ....。止まないかと願い、少し出発を遅らせてもみたが、なかなか降り止む気配は無かった。仕方が無いので、まだ暗い中を出発する事にした。気持ち的にもだいぶ焦っていたのかもしれない。僕はここで、間違いをおかしてしまう。
パープルレイクから、JMTに戻るのに、間違えて別のトレイルに入ってしまったのだ。焦っていたのと、朝で頭が動いていなかった事、これまでのトレイルがすごく分かり易く安心してしまい、別のトレイルとの交差点という事を見落としていた事。いろいろとある。随分と歩いた後に、どう考えても地図と地形が合わない事に気がついた。基本、間違えた場合には戻る事が鉄則だが、戻って、トレイルに復帰した場合には、時間をロスして出発時刻に間に合わなくなる可能性が出て来る。地図では、少々迂回する形にはなるが、谷に降りて、また山を登る形で、JMTに復帰出来る事から、先に進む事にした。点線のトレイルには、本当に誰もいない。となると、あたりまえのように、トレイルも荒れている。僕たちは途中大きなショックを受ける事となる。雨の中、目の前に、幅が約20m程の川が現れたのだ。雨で水も増水している。そして、なによりも、驚いたのが、向こう岸にトレイルの続きが見当たらないのだ...。水は、深い所で太ももぐらいの深さ、それでも渡れない事は無い。川を渡渉してどこに上がれば良いのか分からないまま、渡渉を開始する事にした。木々が生い茂っているので、川の中で上陸地点を探しながらの渡渉だ。ビーバーの巣のように、木々が固まっている場所から上陸出来そうだったので、無理して木の上に這い上がり、薮をこいでいく。すると、ほどなく、人の足跡を発見する事が出来た。その足跡を追いながら、無事トレイルに復帰する事が出来た....。
雨が降っている事、道を間違え、谷に降りて山を登り返している事、困難な渡渉をした事、そして蚊があまりにも多い事。積み重なって、心身的にかなりつらいムードが漂う。歩き続けるうちに、越えるべき峠が、見えはじめてきた。そして、ようやくJMTに復帰出来た。本当にうれしかったなw そうしているうちに、ハイカーとも出会うようになってくる。あるハイカーは、地下足袋を履いていた。単独行の加藤文三郎のようだと思い、話をしてみると、通常の登山靴とは別に渡渉用に地下足袋を持ってきているとの事。
途中雨も降り止まないので、VVRに行くのをあきらめて、ビバークしようかとも考えた。さっとタープだけ張り、アルコールストーブに火を付けて、軽く朝食などを食べながら、休んでいると、雨が降り止んだ。本当にうれしいね。とお互いに思いながら、シルバーパスを目指す。
シルバーパスの頂上付近になってくると雪が出てくる。雪はだいぶとけていて、歩きづらい。
ようやく、シルバーパスを越える。峠の向こうにはまた、新しい山の世界が広がっている。既に、アンセルアダムス国立公園を越えて、ジョンミューア国立公園の中を僕たちは歩いている。山頂には先程の地下足袋のハイカーや、JAMを背負ったハイカーが休んでいる。挨拶を交わす。みんな、シルバーパスからの雄大な景色を存分に味わっている。彼等はパスの付近に今夜は泊まるらしい。だが、雲行きはまたおかしくなってきている。僕たちは、先を急ぐ事にした。
シルバーパスの先は、カールした地形や、高地の湖が大変に美しかった。やがて、事前にチェックしていた問題の渡渉地点にさしかかる。
渡渉はなんて事はなかった。時期の問題か、チェックした場所を間違えたのか...どうやら後者のようだった。
途中から、大きな岩石で出来た地形から所々木々が生えている場所に入る。右側が切れていて崖になっている箇所を、スイッチバックしながら、谷へと降りて行く。そのトレイルの途中に、滝が流れている?? どういう事かというと、トレイルの山側が滝、幅が3mあるか無いかのトレイルに流れ落ちて短い川を作り、そのまま右の崖に流れ落ちてさらに滝を作っている。地図を見ると確かに川は描かれている。水も別に深いわけでは無いので、問題は無いのだけど、正直、こんな所を歩くんだ...と思った。転んで流されたら終わり。面白いと思えば面白いトレイル。
先を急ぐ。どうにか時間には間に合いそうだと感じていた。雲行きはさらに怪しくなる。雷も聞こえ始める。そして....いきなりのゲリラ豪雨がはじまった。 豪雨と雷が襲いかかってくる。あたり一面に雷が落ちている。光ってすぐに轟いている事から、まさに、雷雲の下にいる事が分かる。山の上からトレイルを伝って濁流が流れてきて、トレイルは川となった。どこに避難すれば良いのか....迷いながらも大きな木の下をさけて、じっと雷雲が抜けるのを待つ。レインケープも、レインジャケットも豪雨には太刀打ち出来ない。ゲリラ豪雨は、夕立のようにじきに収まった。このままビバークするか、急いで、水上バスを目指して、この場所から離れるか....。身体も濡れている。時間的には押し迫っていたが、早く歩く方を僕たちは選んだ。先を急ぐ。
すると、ゲリラ豪雨の次には.....パチンコ玉サイズのヒョウが降ってきた。
こんな大きなヒョウに降られたのは、生まれてはじめてだった。痛い。痛い。少しでも当たらないようにと木の下に避難をする。ヒョウもすぐに降り止んだ。
なんという天気かw 逃げるように先を急ぐ。いくつか渡渉を繰り返す。水の増水もあり、流れも早かった。水上バスは定刻通りに出発するのか、そもそも、この天気でも出航するのかがとても気になる。湖にようやく着いた。JMTから一旦離れて、水上バスの発着所までのトレイルを歩く。距離が長く感じられた。どうにか無事定刻前に水上バスの発着所に着く。発着所には、僕たち以外にも出発を待つ人達があふれ、身体を乾かす為に焚き火をしていた。ありがたい。僕たちも焚き火の輪に混ぜてもらった。随分と身体が冷えきっていた事が分かる。焚き火の熱が身体の芯までなかなか入ってこない。
湖の方面は、青空が広がっている。雷雲がかかっているのは、どうやら山沿いだけのようだ。じきに出発時刻となり、湖から水上バスがやってくる。僕たちは水上バスに乗り込み、VVRに向かった。
VVRに到着する。ここは、ロッジと、テント場に分かれている。僕らはテント場を借りる事にした。まず、シャワーを浴びた。シャワーは、ユニットバスのような感じであまりきれいとは言いがたいが、暖かいシャワーを浴びれるのは本当にうれしいものだ。シャワーの他にも洗濯機など、たいがいの設備は揃っている。身体も心もあったまった所で、食事にする。迷わず僕はステーキを頼んだ。ビールも地元のエールビールを飲む。ハイカーに囲まれながら食べる食事は最高だった。色々なハイカーと情報交換をする。熊に会った事をうらやむドイツ人の高年のハイカー夫婦に会ったり、イギリスにも島を横断するロングトレイルがある事を教えていただいたりもした。ハイカーの一人は、偶然にも山と道がある鎌倉に以前ホームステイをした事があるという。その事実が分かると、周りから「Its a Trail Magic!」という声が弾む。トレイルで起きる奇跡の事をそう呼ぶそうだ。とても素敵な言葉だと思った。
そして、今後のトレイル情報も手に入れる。ハイカーの間で、エボリューションクリークの渡渉が大きな困難になるだろうと噂になっていた。水は太ももを越えて腰ぐらいまであるらしい。 その場所は予定では2日後に越える事になる...。
みんなで焚き火を囲みながらビールを飲んでいると、山側に大きな虹が出ていると聞いて見に行く。山の天気と、山の外の天気の違いを実感する。シルバーパスに泊まると言っていたハイカーが無事なのかがとても気になる。それにしてもVVR はいい。ハイカーとの交流場所としても素晴らしいし、ハイカーの為の場所という雰囲気がある。ここで会った何人かは、僕らが、JMTを離脱するまでずっとトレイルで出会う事になっていくのだ。
行動距離29.5km
今日は、シルバーパス3322mを越えて、VVR(Vermillion Valley Resort)という宿泊施設を目指す。この施設は、LAKE THOMAS A EDISONという大きな湖を、水上バスで越えた先にある施設で、JMT、PCTを歩くハイカーの支援をおこなっている。事前に、補給用食料をこの施設に送っておくと、現地で受け取る事が出来るのだ。僕らは今回のハイキングで、トゥオルミーメドウと、このVVRの2カ所に食料を送っておいた。実際歩いてみると、前半部分は食料の調達も現地で十分に出来るので、2カ所も送る必要は無かったかもしれない。
この区間のトレイルでは、僕たちは2つの問題を抱えていた。一つは、VVRへ行くための水上バスの出発スケジュールが、午前中9:45と、夕方16:45の2便しかなく、僕たちは、夕方の16:45までに水上バスの出発場所に着かなくてははならない。もう一つは、シルバーパスの先の川の渡渉が困難であると事前に情報を得ていていた事だ。もし、間に合わなければ、今回のハイキングの行程、スケジュールの見直しを考えなくてはならない。
僕たちは、出発時刻に間に合わせる為に、いつもよりも早く起きた。外は雨だった。天気予報が浮かぶ....。止まないかと願い、少し出発を遅らせてもみたが、なかなか降り止む気配は無かった。仕方が無いので、まだ暗い中を出発する事にした。気持ち的にもだいぶ焦っていたのかもしれない。僕はここで、間違いをおかしてしまう。
パープルレイクから、JMTに戻るのに、間違えて別のトレイルに入ってしまったのだ。焦っていたのと、朝で頭が動いていなかった事、これまでのトレイルがすごく分かり易く安心してしまい、別のトレイルとの交差点という事を見落としていた事。いろいろとある。随分と歩いた後に、どう考えても地図と地形が合わない事に気がついた。基本、間違えた場合には戻る事が鉄則だが、戻って、トレイルに復帰した場合には、時間をロスして出発時刻に間に合わなくなる可能性が出て来る。地図では、少々迂回する形にはなるが、谷に降りて、また山を登る形で、JMTに復帰出来る事から、先に進む事にした。点線のトレイルには、本当に誰もいない。となると、あたりまえのように、トレイルも荒れている。僕たちは途中大きなショックを受ける事となる。雨の中、目の前に、幅が約20m程の川が現れたのだ。雨で水も増水している。そして、なによりも、驚いたのが、向こう岸にトレイルの続きが見当たらないのだ...。水は、深い所で太ももぐらいの深さ、それでも渡れない事は無い。川を渡渉してどこに上がれば良いのか分からないまま、渡渉を開始する事にした。木々が生い茂っているので、川の中で上陸地点を探しながらの渡渉だ。ビーバーの巣のように、木々が固まっている場所から上陸出来そうだったので、無理して木の上に這い上がり、薮をこいでいく。すると、ほどなく、人の足跡を発見する事が出来た。その足跡を追いながら、無事トレイルに復帰する事が出来た....。
雨が降っている事、道を間違え、谷に降りて山を登り返している事、困難な渡渉をした事、そして蚊があまりにも多い事。積み重なって、心身的にかなりつらいムードが漂う。歩き続けるうちに、越えるべき峠が、見えはじめてきた。そして、ようやくJMTに復帰出来た。本当にうれしかったなw そうしているうちに、ハイカーとも出会うようになってくる。あるハイカーは、地下足袋を履いていた。単独行の加藤文三郎のようだと思い、話をしてみると、通常の登山靴とは別に渡渉用に地下足袋を持ってきているとの事。
途中雨も降り止まないので、VVRに行くのをあきらめて、ビバークしようかとも考えた。さっとタープだけ張り、アルコールストーブに火を付けて、軽く朝食などを食べながら、休んでいると、雨が降り止んだ。本当にうれしいね。とお互いに思いながら、シルバーパスを目指す。
シルバーパスの頂上付近になってくると雪が出てくる。雪はだいぶとけていて、歩きづらい。
ようやく、シルバーパスを越える。峠の向こうにはまた、新しい山の世界が広がっている。既に、アンセルアダムス国立公園を越えて、ジョンミューア国立公園の中を僕たちは歩いている。山頂には先程の地下足袋のハイカーや、JAMを背負ったハイカーが休んでいる。挨拶を交わす。みんな、シルバーパスからの雄大な景色を存分に味わっている。彼等はパスの付近に今夜は泊まるらしい。だが、雲行きはまたおかしくなってきている。僕たちは、先を急ぐ事にした。
シルバーパスの先は、カールした地形や、高地の湖が大変に美しかった。やがて、事前にチェックしていた問題の渡渉地点にさしかかる。
渡渉はなんて事はなかった。時期の問題か、チェックした場所を間違えたのか...どうやら後者のようだった。
途中から、大きな岩石で出来た地形から所々木々が生えている場所に入る。右側が切れていて崖になっている箇所を、スイッチバックしながら、谷へと降りて行く。そのトレイルの途中に、滝が流れている?? どういう事かというと、トレイルの山側が滝、幅が3mあるか無いかのトレイルに流れ落ちて短い川を作り、そのまま右の崖に流れ落ちてさらに滝を作っている。地図を見ると確かに川は描かれている。水も別に深いわけでは無いので、問題は無いのだけど、正直、こんな所を歩くんだ...と思った。転んで流されたら終わり。面白いと思えば面白いトレイル。
先を急ぐ。どうにか時間には間に合いそうだと感じていた。雲行きはさらに怪しくなる。雷も聞こえ始める。そして....いきなりのゲリラ豪雨がはじまった。 豪雨と雷が襲いかかってくる。あたり一面に雷が落ちている。光ってすぐに轟いている事から、まさに、雷雲の下にいる事が分かる。山の上からトレイルを伝って濁流が流れてきて、トレイルは川となった。どこに避難すれば良いのか....迷いながらも大きな木の下をさけて、じっと雷雲が抜けるのを待つ。レインケープも、レインジャケットも豪雨には太刀打ち出来ない。ゲリラ豪雨は、夕立のようにじきに収まった。このままビバークするか、急いで、水上バスを目指して、この場所から離れるか....。身体も濡れている。時間的には押し迫っていたが、早く歩く方を僕たちは選んだ。先を急ぐ。
すると、ゲリラ豪雨の次には.....パチンコ玉サイズのヒョウが降ってきた。
こんな大きなヒョウに降られたのは、生まれてはじめてだった。痛い。痛い。少しでも当たらないようにと木の下に避難をする。ヒョウもすぐに降り止んだ。
なんという天気かw 逃げるように先を急ぐ。いくつか渡渉を繰り返す。水の増水もあり、流れも早かった。水上バスは定刻通りに出発するのか、そもそも、この天気でも出航するのかがとても気になる。湖にようやく着いた。JMTから一旦離れて、水上バスの発着所までのトレイルを歩く。距離が長く感じられた。どうにか無事定刻前に水上バスの発着所に着く。発着所には、僕たち以外にも出発を待つ人達があふれ、身体を乾かす為に焚き火をしていた。ありがたい。僕たちも焚き火の輪に混ぜてもらった。随分と身体が冷えきっていた事が分かる。焚き火の熱が身体の芯までなかなか入ってこない。
湖の方面は、青空が広がっている。雷雲がかかっているのは、どうやら山沿いだけのようだ。じきに出発時刻となり、湖から水上バスがやってくる。僕たちは水上バスに乗り込み、VVRに向かった。
VVRに到着する。ここは、ロッジと、テント場に分かれている。僕らはテント場を借りる事にした。まず、シャワーを浴びた。シャワーは、ユニットバスのような感じであまりきれいとは言いがたいが、暖かいシャワーを浴びれるのは本当にうれしいものだ。シャワーの他にも洗濯機など、たいがいの設備は揃っている。身体も心もあったまった所で、食事にする。迷わず僕はステーキを頼んだ。ビールも地元のエールビールを飲む。ハイカーに囲まれながら食べる食事は最高だった。色々なハイカーと情報交換をする。熊に会った事をうらやむドイツ人の高年のハイカー夫婦に会ったり、イギリスにも島を横断するロングトレイルがある事を教えていただいたりもした。ハイカーの一人は、偶然にも山と道がある鎌倉に以前ホームステイをした事があるという。その事実が分かると、周りから「Its a Trail Magic!」という声が弾む。トレイルで起きる奇跡の事をそう呼ぶそうだ。とても素敵な言葉だと思った。
そして、今後のトレイル情報も手に入れる。ハイカーの間で、エボリューションクリークの渡渉が大きな困難になるだろうと噂になっていた。水は太ももを越えて腰ぐらいまであるらしい。 その場所は予定では2日後に越える事になる...。
みんなで焚き火を囲みながらビールを飲んでいると、山側に大きな虹が出ていると聞いて見に行く。山の天気と、山の外の天気の違いを実感する。シルバーパスに泊まると言っていたハイカーが無事なのかがとても気になる。それにしてもVVR はいい。ハイカーとの交流場所としても素晴らしいし、ハイカーの為の場所という雰囲気がある。ここで会った何人かは、僕らが、JMTを離脱するまでずっとトレイルで出会う事になっていくのだ。
行動距離29.5km