6.27.2012

飯豊残雪期縦走 前半

飯豊連峰は、福島県、新潟県、山形県の県境にある。2000m前後の山とは思えないたたずまい、高山植物が咲き乱れる事で有名だ。山のシーズン開始は7月からでそれまでは登山口までのバスは運行していない。


Aが飯豊温泉 Bが大石ダム

僕たちは今回、飯豊連峰を、福島・会津側から入った。

山に入る前に役場や下山口の山荘等に連絡をして情報収集をした。
予定では、翌日から山に入り、天候や山の調子がよければ、大石ダムまで2泊で歩く。天候の問題など、長く歩く事が難しいと判断されれば、飯豊温泉に抜ける。というプランでいた。地図でみると、飯豊温泉の他に奥胎内に抜けるルートもあるが、こちらはまだ登山口まで車が入れない、山荘の営業どころか、下山口で電話も通じないとの事だった。

会津若松までは高速バスを使い、会津若松に昼過ぎに到着。駅にある観光案内所で教えてもらった会津ラーメンを食べて、電車で山都駅に移動。予約しておいたタクシーに乗り込んで、川入の野営場に入った。

天気はあまり宜しくなく、予報では翌日は晴れるが、その後はどんどん天候が悪化する予報になっていた。野営場で登山客と話すと、その日は山の上は雨やガスでほとんど見晴らしは無かったらしい。



シェルターは、豊嶋さん用意のシャングリラ一幕のみとした。思いのほか早くついたので、だらりと過ごす。



山に入る前日という事もあって、贅沢に豊嶋さん作 具だくさんの野菜シチュー(?)をごちそうになる。他に三崎で買ったエイヒレや、蛸、タクシーで来る途中に寄った店で買った焼き餃子などをつまみにだらだらと酒を飲む。

トレイルデザインのサイドワインダーを持っていったが、今回は上手くウッドストーブを使う事が出来なかった。ストーブ内の空気が酸欠になり、火が上手く燃えない。ニュージーランドではまったく問題が無かったけど、今回は上手く使いこなす事が出来なかった。


翌日は快晴。








飯豊山は山岳信仰の山として大事にされてきたらしい。多分そのおかげだと思うのだが、飯豊山に向かう山裾の森は巨木が多かった。


稜線は雲で覆われていて、ときたま、雲の隙間から山が見えるという感じだった。


雪解けが進んでブヨが大量に発生していた。映像を見てもらうと、前半このあたりで黒いノイズのようなものが画面にたくさん走っているのが分かる。これは全てノイズでは無くブヨ。
不快ではあるけれども、アメリカの蚊やNZのサンドフライのように、すぐに襲ってくるという感じではなかったので安心。ときたま噛まれる。





地蔵山から三国岳の間、剣ヶ峰の岩稜。見た目よりは登りやすいが、雨の日の下山は少し怖いと思う。


三国岳の避難小屋。夏のシーズンに向けて、避難小屋の準備の為に、管理人さんが2人入っていた。飯豊の避難小屋は場所によってはシーズン中には管理人さんが入る。避難小屋ではあるけれども、運営費として泊まるのに2000円程かかる。この先の避難小屋は管理人はいなくても開いていると聞いてほっとする。
ブヨがすごく多い中で、僕の半袖、短パンという姿を見て笑っていた。
福島・会津の方は気持ち良い人が多い。ここまでで出会った、商店のおばちゃんや、野営場のおじさん夫婦、みんな本当に明るくて、気持ちが良い人ばかりだ。少しの時間の出会いだけなのに、福島、会津の人の良さに感動する事となった。僕たちが飯豊山に向けて出発すると、避難小屋の前で管理人さん達は僕たちが見えなくなるまで小屋の前で見送ってくれていた。


三国岳からの稜線は所々雪に埋まっていた。場所によっては、雪をさけて薮に入る事もあった。













残雪期の雪の模様はグラフィカルでとても美しい。


時々雪を踏み抜くw




雲が良く流れていて、素晴らしい景色、雲が交互に現れていく。


































あたり一面が雲に覆われて、周り全体が白くなり、ぽっかりと上の青空だけが見えていたりすると、まるで天上を歩いている気分になる。ホワイトアウトとも言うけど...。


雲の隙間から一瞬見えた明日向かう飯豊連峰の山々。なんとも美しい。


御西小屋。この日はここで泊まった。
今日一日はとても気持ち良いハイクを楽しめたが、実は明日からの行程がとても心配になっていた。予報では天気は悪化の一途を辿ると出ている。ときたまホワイトアウトする中、気温が高い為に雪がシャーベット状になっていて、軽アイゼンが効かない。かつ山と道の2人はキックステップが出来ないトレランシューズ...。

小屋の水場は雪に埋まっていて、稜線沿いで水を得るには、雪を溶かすしかなかった。
夜食事を作ろうとセイシェルで水を濾過しようとするが、フィルターがダメにになってしまい、いくら押しても水が出ない。身体全体の体重をかけて、足で押してどうにか...水を作る。
セイシェルのフィルターは濾過する水が汚い場合、手拭などで濾過した上で浄水するとは聞いていたが、ぱっと見きれいな雪溶け水でフィルターがつまるとは思いもしなかった。

浄水器がほぼ使えない。
雪を溶かして水を作って全行程を歩くには燃料が少し乏しい。
アイゼン(スパイダーだったという理由も大きい)が効きずらい。
トレランシューズでは雪の上を歩きずらい。
ホワイトアウトするのは避けたい。

地図をよく見ると、明日歩く予定の場所でいくつか気になる急斜面がある。
その場所の雪の状態がとても気になる....。天気は持つだろうか。

天気次第では引き返す事も考えなくてはならない。

豊嶋さんのiPhoneはSIMフリーのDOCOMO仕様で、どうにか電波が入る所で、詳細な登山天気予報を入手する。それによると、明日は午前中は天気、昼から天候が崩れると予報が出た。
大石ダムまで歩く事は諦めて、明日中に飯豊温泉に降りるか、天気次第、雪の状態次第で、引き返す事を視野に入れて眠る事にした。













6.23.2012

飯豊残雪期縦走「花と残雪の山と道」




豊嶋さんと念願の残雪期の飯豊に行ってきました。
映像は豊嶋さん製作の「花と残雪の山と道」悪天候に変わるかもしれない天気の中、残雪期の飯豊は怖くも美しく、とても楽しい山行でした。







6.19.2012

台高山脈縦走 後半 2日目/3日目/4日目

2日目

朝起きると天気だった。
一晩中振っていた雨はあがり、気持ちよい朝を迎えた。
起きたばかりで、お腹も減っていなかったので、すぐに歩きはじめる事にする。
シェルターを撤収して、尾根沿いに歩いていくが、少しおかしい。

もう一度地図を良くみてみると、道を間違っている事が分かった。
昨日雨の中気がつかずに、丁度直角にトレイルが曲がるポイントにシェルターを張っていたのだった。シェルターを張った場所まで戻ってみると、尾根から山を下るような形に赤いテープを発見した。



カエルの鳴き声が山に響き、水場が近い事が分かる。小さな沢がトレイルと平行して現れる。
台高山脈は水で困ると聞いていたので、ウォーターボトルはいつもより多めに用意した。

僕たちのウォーターボトルは以下の通り。

ナルゲン フォールディングカンティーン 1.L
L ペットボトル
500ml ペットボトル X3
セイシェル 500ml

合計4.5L

ナルゲン フォールディングカンティーンは、折りたたみ式のウォータボトルで、プラティパスと比べると、口が広く使いやすいのが特徴。セイシェルのフィルターを接続して使う事もあります。
後は、大体使い捨てのイロハスのペットボトル。軽くて安くて山に入る直前に入手が出来る。
セイシェルは、放射性物質も濾過する浄水器として使用する他、無濾過の水を持ち歩くのに使う。

台高山脈は、他の稜線歩きと同じく、水場は多くは無く、仮に地図に水場マークがあったとしても、水を手に入れられる補償は無い。僕たちの二日目は、朝に手にいれた水意意外に水場を見つける事が出来なかった。


 間違えた尾根を進んでいる。

台高山脈は小さなピークをいくつも越えて歩いていく。二日目の前半は、トレイルもしっかりとしていたが、山深く入っていくにつれて、トレイルは踏み跡がどうにか認識出来るぐらいになり、そのうちに、踏み跡も良く分からなくなる。ルートを示すテープと地図をたよりに薮をこいで歩くようになる。道がわからなくても、必ずピークを踏むようにルートが作られているので、ピークを踏めば、どこかしらの方向にテープを発見する事が出来る。ピークに出るといくつかの尾根道が現れる。歩き易い尾根が必ずしもルートで無い事も多い。所々現れる小さな踏み跡を頼って歩くとルートを間違えてしまう事もある。ピークに達したら、ルートを間違えないように、地図を確かめて、ルートを示すテープを見つけなくてはならない。僕らは何度か入る尾根を間違えては引き返す。を繰り返しながら山を進んでいった。道が分からなくなっても、地図で目標とするピークさえ掴めればどうにかなる。必ずピークを踏む事。ピークから尾根道に入って200m程歩いてもテープを発見する事が出来ない場合は、ピークまで戻る事が鉄則だと思う。テープは必要な箇所にはついている。目印を付けてくださった方々にとても感謝したい。



山は本当に美しかった。シャクナゲや、山ツツジ、白やしろが満開で、ヒメシャラやブナ、モミジなど、様々な木々の新緑が、太陽の光を通過する事で、あたり一面に美しい緑の光の世界を作り出していた。



場所によっては、身長を越える薮の中を通過する箇所がいくつかある。歩きやすい場所を歩いているとルートを踏み外す事になるので注意が必要。




地図にあるキャンプ適地以外にも、いたる所にキャンプに適した場所がある。決して歩き易くは無いが、ステルスキャンプにこれほど適したトレイルも珍しいと思った。キャンプ適地に縛られずに、歩けるだけ歩けば、1時間もしないうちに大体キャンプ出来る所を見つけられると思う。

今回このハイクにアドバイスをいただいたパンダマンさんからいろいろと装備を借りた。展示会の準備の合間にバタバタと整理していて、展示会のバックパックサンプルと一緒に入れて送ったと思っていたクッカーやストーブの一部を忘れたり、飛行機の中に台高の地図を忘れてしまった。パンダマンさん本当にありがとう。



パンダマンさんから借りたブッシュバディストーブ。
これがすごく使い易かった。僕は他に二つ程ウッドストーブを持っているが、完成度ではこのブッシュバディが一番だと感じた。二重壁の間から上がってくる熱せられた空気に火が付き、二次燃焼が気持ちよくおこる。今回のハイクは雨に濡れる事が多かったが、濡れた木々でも煙がたくさん出るが問題無く使う事が出来た。料理した後も、木々を燃やして、小さな焚き火をゆっくりと毎晩楽しむ事が出来た。小さな焚き火を楽しむにもこのサイズが丁度良いと思う。自分も手に入れたい。この日は朝から最後まで誰にも会う事は無かった。

ブッシュバディのサイトはこちら
日本でもこちらで販売されています。
山より道具の寺澤さんのレビューはこちら


3日目






3日目の朝。次の水場で水が入手出来るのか朝からドキドキしていた。朝からいくつものピークや、岩場などを越えて歩いて、水がある事を祈る。どこからか、カエルの声がしてきて水場が近い事が分かる。トレイルの横に水たまりのような沢っぽい場所を見つける事が出来た。さすがに流れていない水を汲む気にはなれなかったので、沢沿いに100m程降りて、水が流れているポイントを見つけて、水をたくさん汲んで飲んだ。




途中、4人組の年配の日帰り登山者に会った。あちらもこんな場所で人に会う事に驚かれていたが、僕らも驚いた。




 テープだけでなく、写真の赤い紐や、年期の入った水色のビニールテープなど様々な目印がある。


 ヒメシャラは冷たくて、疲れた身体には気持ちがいい。






















夕方近くになるとまた小雨が降り始める。
道は大台ケ原に近づくにつれて、少しづつ歩き易く変わって来る。水は3日目以降は問題無く地図上の水場で水を汲む事が出来た。御座嵓の手前でシェルターを張った。


 4日目






翌朝は大台ケ原に向かう。バスの時間を調べてなかった。大きなミス。多分午前中にバスがあるだろうと思い、9時過ぎに着くよう早く出発する事にした。大台辻から近くの御座嵓は神聖的な雰囲気を持つ山だった。様々な木々が山を覆い、急な山を登ると頂上から、ここまでで一番の展望が広がる。このあたりは巨木も多く、御座嵓から大台辻までは、奥秩父の丹波山のような、なだらかでテント適地としても使える気持ちよい尾根歩きが続く。大台ケ原から1泊でここまでくるのもとても気持ちが良いと思う。






















大台辻からは古道を歩いて大台ケ原に向かう。石を積んで作られたこの道を作るのにどれだけの時間がかかった事だろうか。古道は所々道が崩落しているが歩きやすい。吊り橋をいくつも渡って大台ケ原へと続く道路に出た。道路から入る道が通行止めとなっている。古道は道が所々崩落しているので通行止めとしているらしい。大台ケ原に来る一般の観光客が入るのを制限する為だと思うが、他の山といろいろと比べても通行止めにする程の事とは思えなかった。もったいない


 金明水はとても美味しい水だった。


大台ケ原駐車場に9時30頃に着く。バスは平日は3時台に一本だけ.。急いで降りてきたけど、バスは無かった。とりあえず、休憩所でビールで乾杯。休憩所のおじさんには山行のご褒美として、おでんをごちそうしていただいた。ありがとうございました。






5月29日大又から明神平から台高山脈に入り6月1日に大台ケ原に下山。
バックパックは、山と道U.L.FramePack ONE CTF3 Cuben Fiber editionと山と道MINI 
ニュージーランドと同じスタイルで2人用の寝袋もって行った。



台高山脈は、ニュージーランドのバックカントリートラックを歩いた事を思い出した。トレイルがある所もあれば、テープや標識、地図をたよりに、道なき道を歩く。歩いている人もほんとどいなく、大自然の中を思う存分満喫出来るすばらしいハイクを楽しむ事が出来た。秋に歩けば素晴らしい紅葉の中を延々と歩ける事だろうと思う。
下山後にヒルに会わなかったか?と聞かれる事が何度かあったが、僕たちは会わなかった。雨に振られた初夏でヒルに会わないという事は、稜線沿いにはヒルはあまりいないのかもしれない。山深くになるにつれて、鹿も会わなくなり、水場も少ないから、ヒルも少ないのだと思う。途中、踏み跡で、5本指の人サイズの熊なのか、ビブラムのファイブフィンガーなのか分からない.踏み後がいくつかあった。人や獣の踏み跡を見ながら歩く山歩きはなんとも楽しかった。