2日目
一晩中振っていた雨はあがり、気持ちよい朝を迎えた。
起きたばかりで、お腹も減っていなかったので、すぐに歩きはじめる事にする。
シェルターを撤収して、尾根沿いに歩いていくが、少しおかしい。
もう一度地図を良くみてみると、道を間違っている事が分かった。
昨日雨の中気がつかずに、丁度直角にトレイルが曲がるポイントにシェルターを張っていたのだった。シェルターを張った場所まで戻ってみると、尾根から山を下るような形に赤いテープを発見した。
カエルの鳴き声が山に響き、水場が近い事が分かる。小さな沢がトレイルと平行して現れる。
台高山脈は水で困ると聞いていたので、ウォーターボトルはいつもより多めに用意した。
僕たちのウォーターボトルは以下の通り。
ナルゲン フォールディングカンティーン 1.5L
1L ペットボトル
500ml ペットボトル X3
セイシェル 500ml
合計4.5L
ナルゲン フォールディングカンティーンは、折りたたみ式のウォータボトルで、プラティパスと比べると、口が広く使いやすいのが特徴。セイシェルのフィルターを接続して使う事もあります。
後は、大体使い捨てのイロハスのペットボトル。軽くて安くて山に入る直前に入手が出来る。
セイシェルは、放射性物質も濾過する浄水器として使用する他、無濾過の水を持ち歩くのに使う。
台高山脈は、他の稜線歩きと同じく、水場は多くは無く、仮に地図に水場マークがあったとしても、水を手に入れられる補償は無い。僕たちの二日目は、朝に手にいれた水意意外に水場を見つける事が出来なかった。
間違えた尾根を進んでいる。
台高山脈は小さなピークをいくつも越えて歩いていく。二日目の前半は、トレイルもしっかりとしていたが、山深く入っていくにつれて、トレイルは踏み跡がどうにか認識出来るぐらいになり、そのうちに、踏み跡も良く分からなくなる。ルートを示すテープと地図をたよりに薮をこいで歩くようになる。道がわからなくても、必ずピークを踏むようにルートが作られているので、ピークを踏めば、どこかしらの方向にテープを発見する事が出来る。ピークに出るといくつかの尾根道が現れる。歩き易い尾根が必ずしもルートで無い事も多い。所々現れる小さな踏み跡を頼って歩くとルートを間違えてしまう事もある。ピークに達したら、ルートを間違えないように、地図を確かめて、ルートを示すテープを見つけなくてはならない。僕らは何度か入る尾根を間違えては引き返す。を繰り返しながら山を進んでいった。道が分からなくなっても、地図で目標とするピークさえ掴めればどうにかなる。必ずピークを踏む事。ピークから尾根道に入って200m程歩いてもテープを発見する事が出来ない場合は、ピークまで戻る事が鉄則だと思う。テープは必要な箇所にはついている。目印を付けてくださった方々にとても感謝したい。
山は本当に美しかった。シャクナゲや、山ツツジ、白やしろが満開で、ヒメシャラやブナ、モミジなど、様々な木々の新緑が、太陽の光を通過する事で、あたり一面に美しい緑の光の世界を作り出していた。
場所によっては、身長を越える薮の中を通過する箇所がいくつかある。歩きやすい場所を歩いているとルートを踏み外す事になるので注意が必要。
地図にあるキャンプ適地以外にも、いたる所にキャンプに適した場所がある。決して歩き易くは無いが、ステルスキャンプにこれほど適したトレイルも珍しいと思った。キャンプ適地に縛られずに、歩けるだけ歩けば、1時間もしないうちに大体キャンプ出来る所を見つけられると思う。
今回このハイクにアドバイスをいただいたパンダマンさんからいろいろと装備を借りた。展示会の準備の合間にバタバタと整理していて、展示会のバックパックサンプルと一緒に入れて送ったと思っていたクッカーやストーブの一部を忘れたり、飛行機の中に台高の地図を忘れてしまった。パンダマンさん本当にありがとう。
パンダマンさんから借りたブッシュバディストーブ。
これがすごく使い易かった。僕は他に二つ程ウッドストーブを持っているが、完成度ではこのブッシュバディが一番だと感じた。二重壁の間から上がってくる熱せられた空気に火が付き、二次燃焼が気持ちよくおこる。今回のハイクは雨に濡れる事が多かったが、濡れた木々でも煙がたくさん出るが問題無く使う事が出来た。料理した後も、木々を燃やして、小さな焚き火をゆっくりと毎晩楽しむ事が出来た。小さな焚き火を楽しむにもこのサイズが丁度良いと思う。自分も手に入れたい。この日は朝から最後まで誰にも会う事は無かった。
3日目
3日目の朝。次の水場で水が入手出来るのか朝からドキドキしていた。朝からいくつものピークや、岩場などを越えて歩いて、水がある事を祈る。どこからか、カエルの声がしてきて水場が近い事が分かる。トレイルの横に水たまりのような沢っぽい場所を見つける事が出来た。さすがに流れていない水を汲む気にはなれなかったので、沢沿いに100m程降りて、水が流れているポイントを見つけて、水をたくさん汲んで飲んだ。
途中、4人組の年配の日帰り登山者に会った。あちらもこんな場所で人に会う事に驚かれていたが、僕らも驚いた。
道は大台ケ原に近づくにつれて、少しづつ歩き易く変わって来る。水は3日目以降は問題無く地図上の水場で水を汲む事が出来た。御座嵓の手前でシェルターを張った。
4日目
翌朝は大台ケ原に向かう。バスの時間を調べてなかった。大きなミス。多分午前中にバスがあるだろうと思い、9時過ぎに着くよう早く出発する事にした。大台辻から近くの御座嵓は神聖的な雰囲気を持つ山だった。様々な木々が山を覆い、急な山を登ると頂上から、ここまでで一番の展望が広がる。このあたりは巨木も多く、御座嵓から大台辻までは、奥秩父の丹波山のような、なだらかでテント適地としても使える気持ちよい尾根歩きが続く。大台ケ原から1泊でここまでくるのもとても気持ちが良いと思う。
大台辻からは古道を歩いて大台ケ原に向かう。石を積んで作られたこの道を作るのにどれだけの時間がかかった事だろうか。古道は所々道が崩落しているが歩きやすい。吊り橋をいくつも渡って大台ケ原へと続く道路に出た。道路から入る道が通行止めとなっている。古道は道が所々崩落しているので通行止めとしているらしい。大台ケ原に来る一般の観光客が入るのを制限する為だと思うが、他の山といろいろと比べても通行止めにする程の事とは思えなかった。もったいない…。
金明水はとても美味しい水だった。
大台ケ原駐車場に9時30頃に着く。バスは平日は3時台に一本だけ….。急いで降りてきたけど、バスは無かった。とりあえず、休憩所でビールで乾杯。休憩所のおじさんには山行のご褒美として、おでんをごちそうしていただいた。ありがとうございました。
5月29日大又から明神平から台高山脈に入り6月1日に大台ケ原に下山。
バックパックは、山と道U.L.FramePack ONE CTF3 Cuben Fiber editionと山と道MINI 。
ニュージーランドと同じスタイルで2人用の寝袋もって行った。
台高山脈は、ニュージーランドのバックカントリートラックを歩いた事を思い出した。トレイルがある所もあれば、テープや標識、地図をたよりに、道なき道を歩く。歩いている人もほんとどいなく、大自然の中を思う存分満喫出来るすばらしいハイクを楽しむ事が出来た。秋に歩けば素晴らしい紅葉の中を延々と歩ける事だろうと思う。
下山後にヒルに会わなかったか?と聞かれる事が何度かあったが、僕たちは会わなかった。雨に振られた初夏でヒルに会わないという事は、稜線沿いにはヒルはあまりいないのかもしれない。山深くになるにつれて、鹿も会わなくなり、水場も少ないから、ヒルも少ないのだと思う。途中、踏み跡で、5本指の人サイズの…熊なのか、ビブラムのファイブフィンガーなのか分からない.踏み後がいくつかあった。人や獣の踏み跡を見ながら歩く山歩きはなんとも楽しかった。