4.25.2012

残雪期 ミニマリスト・パッドレビュー

バックパックのテストとミニマリストパッドの使用テストをかねて、南アルプスの鳳凰三山に向かいました。
ミニマリストパッドについて簡単にレビューします。

持っていった宿泊関係の装備は以下の通り
グランドシートは持たず、タイベックビビィを兼用とした。

山と道U.L.Pad15s 75g
山と道ミニマリスト・パッド (45cmカット)45g
スリーピングマット合計 120g

自作タイベックビビィ 155g
まくら:モンベルULコンフォートピロー 70g
NANGA ナノバック720DX 1209g
シュラフ関係合計 1364g

シェルター:ツインシスターズ899g
ペグ関係色々 346g(ペグ関係が重いので、今後軽量化していきたいと思います。)
細いのから大きいの、ワリバシX型自作、DVDなどいろいろと持っていってます。
DVD(or CD)はジャキさんのツイッターで知って、まだ使ってはいませんが、新雪時のふかふかでペグが効かないときに使えるかと予備で確保しています。

合計 1245g

総合計:2729g




山と道U.L.Pad15sにモンベルの枕を接続。マットはニュージーランドで使っていたマットです。少しシミのようなのは、途中休憩するとき雪の上に敷いたときにつきました。

ずっと着替え等を入れたスタッフザックをまくらにしてましたが、着替え等も少なく、まくらのクッション性を出せなかったので、最近は、昔使っていたモンベルのまくらを使っています。接続は普通に穴を開けてストレッチコードを通すと、マットが裂けますので、リペアテープ等で補強した上にハドメを打っています。これでニュージーランドの一月間のハイクで使用しても問題はありませんでした。

腰の部分を重ねるようにして、ミニマリスト・マットを下半身に敷く。

タイベックビビィにシュラフを入れて後は置くだけで完成。多少の冷えは感じましたが、これで残雪期の雪山で熟睡出来ました。後、良いのは雪の上で滑らない事。雪は滑りやすく、シルバーコーティングされた素材や、ビニール系の素材だと、雪の上でつるつると滑り、朝マットごと滑り落ちている事があります。

地面からの冷え込みが厳しい時には、ミニマリスト・パッドを折り曲げて、断熱性とクッション性を上げて、シュラフの中に突っ込んで使う。断熱材としても使われるミニマリストパッドの素材は、身体の体温を直接反射するので、より暖かく感じるのと、小さく折り畳んだマットを常にベストポジションに置けるように、手で位置を修正する事が出来ます。

ビビィ(シュラフカバー)は、雪山で使用するのはあまり良くないと言われています。理由は、ビビィとシュラフの間が結露して、シュラフを濡らしてしまうからです。とはいっても、シェルターやテントについた大量の結露から滴りおちてくる水滴などからシュラフを守りたいときもあります。自作ビビィは、天井等の水滴などが問題無いときは、上部を大きく開いて使用しています。ビビィはマジックテープで止めているので簡単に開ける事が出来ます。

山と道U.L.Pad15sミニマリスト・パッド合計120g。残雪期になりますが、雪山の上でも十分な効果を発揮出来ました。

フェイスブックの方で山行の写真はアップしていますが、雪の北岳は本当に美しかったです。天気がどうなるかと心配していましたが、太陽が上がると同時に雲も消え去り、朝方は遠くまで良く見渡せる快晴となりました。まだまだGWの先まで高い山は雪がついています。残雪期の山を楽しみましょう。








4.21.2012

April-May 山と道サコッシュ カラーバリエイション

大変おまたせしました。
新しい山と道サコッシュをオンラインショップに掲載致しました。
まだ一部製品しか完成出来ておりません。ご注文いただいた品は、
出来上がり次第順次発送をさせていただきます。ご容赦ください。


<カラーバリエイション> 
山と道サコッシュはシーズンごとに豊富なカラーバリエイションを展開していきます。 各カラーバリエイションは売り切れ次第販売終了となります。 *定番カラー、人気色に関しては再販する事もございます。

  2012 April-May 
*商品名をクリックすると商品ページにリンクします。 07 Black x Black 08 Black x Gray 10 Black x Green 12 Gray x Neon Yellow 18 Gray x Black 37 Neon Orange x Purple 49 Neon Pink x Navy 53 Neon Pink x Ocean Blue 91 Ocean Blue x Neon Pink 93 Ocean Blue x Navy

4.16.2012

山と道 ミニマリスト・パッド 53g



山と道 Minimalist Pad
53g

両面シボ加工 100 x 50 x 0.5cm
厚さ7mmの素材の両面を1mmずつ溶かし固めるシボ加工を施した、世界最軽量、耐久性のあるミニマリストの為の新しい山と道のU.L.Pad 。


スカイハイマウンテンワークスとのコラボレーションから生まれた新パッド。

山と道の展示会の開催や、山と道商品のお取り扱いなど、とてもお世話になっているスカイハイマウンテンワークス。六甲の麓、神戸近くの芦屋でお店を開かれています。このお店が面白く注目を集めている事は、山と道を知っている方なら多いのではないでしょうか。スカイハイマウンテンワークスは、六甲山にすぐ歩いていける場所にお店があります。六甲山は東西数十キロにわたって山脈を持ち、近代登山発祥の地でもあり、新田次郎の小説「孤高の人」の主人公 加藤文太郎ゆかりの山としても知られています。そう聞くと駅から遠い山の中にお店があるように感じる方もいると思いますが、実はそうではありません。芦屋川駅から歩いて1分、駅スグ、山スグというすごい場所にスカイハイマウンテンワークスはあります。そして、歩いてすぐの六甲山がとても面白い。様々な山の遊び方を楽しむ事が出来ます。前回私達山と道も参加させていただいたスカイハイマウンテンワークス主催のイベント「<a href="http://skyhighmw.exblog.jp/16453804/">ロックガーデンアドベンチャラスハイキング</a>」では、ハイクからロッククライミング、ラン、沢歩きと、まさにアドベンチャラスなイベントの連続に正直驚きました。ブログにその時に様子が記録されていますので、未見の人はぜひチェックしてください。刺激的な山を背景に、道具の面白さと山の楽しみ方の両方を積極的に提案しているのが、スカイハイマウンテンワークスなのです。

代表の北野拓也さん 奥さんの規子さん

スカイマウンテワンワークスの北野さんはトレイル・ラン、ファスト・パッキングと呼ばれるラン主体のスピーディーな山行を楽しまれています。以前イベントでお世話になったときに聞いた話では、北アルプスを、新穂高からジャンダルムを通り、日本海の親不知まで北アルプスの全山縦走を山中泊装備で2泊3日で走り抜けたと聞いています。長い距離を走り、山の中で眠る、「ファストパッキングでも使える、よりコンパクトなマットが欲しい。」という北野さんの問いかけから山と道ミニマリスト・パッドの製作はスタートしました。何度か試作品を送り、北野さんにテストをしていただき、最終的に出来たのがこの山と道ミニマリスト・パッドになります。

雑誌PEAKS別冊の「みんなの山道具」で北野さんが道具として使っているのが
テスト品のミニマリスト・パッド。


以下ミニマリスト・パッドについて北野さんに伺いました。


山と道 この商品が欲しいと思った理由と使用後の感想を教えてください。

北野拓也さん(以下SHMW)自分の現在一番好きな山行は、トレイルランニングと縦走を融合させたスピードと距離、歩きとは異なる疾走感を追い求めるファストパッキングというスタイル。
 そのスタイルにおいて睡眠という行為は、一時的にランニング&ハイキングを停止させて、疲労を少しでも回復させようという事になる。
 トレイルランニングやファストパッキングというアクティビティは、通常の縦走のキャンプとは異なり、「ランニング」という行為のために山に出かけているので、睡眠を取る「快適性」を重視したキャンプとは異なる。より、ランニングという行為にフォーカスすればするほど、自己の探求となるので、睡眠はなるべく削って、ほぼ仮眠に近い行為になる。ランニング中には一切使用せず、パックの中で眠っている時間が多いからこそ、1gでも軽い方がベターであるべき。
 キャンプにおいて、「快適性」と「軽量化」は相反するものだが、このファストパッキングの場合「軽量化」を重要視することになる。

 このファストパッキングにおいて、ベストなマットについて考えると、「コンパクト」「軽量」「ある程度の快適性(個人差や経験により異なる)」の3点のポイントが重要。
 「コンパクト」さで考えると、エアーマット、インフレータブルマットが思いつくが、小石がゴロゴロしている所でも寝れそうであれば、どこでも仮眠する事を考えるとエアー方式は正直パンクが怖い。「軽量」という事でいうと、クローズドセル系マットがパンクの心配は全くないが、コンパクトさと軽量でいうといまひとつという感じであった。
 そこで、「山と道」さんのマットが登場してきて、その軽量さにリリース当時はかなり驚いた。ただ、必要な分だけカットしたとしても、それでも、ファストパッキングで使用するとしたら大き過ぎてコンパクトとはかけ離れていたし、「ある程度の快適性」からはオーバースペック気味であった。
 どうせ、「ある程度の快適性」であれば良いのであれば、この「山と道」さんのマットを半分の厚さにしてみたらどうだろうか?という考えが生まれた。
 サンプルを作っていただき、個人差は当然あるとは思うが、使用してみたら寒がりな自分でも結構全然イケる感じであった(笑)しかも、厚みが半分になった分、収納がロールでしかできなかったのが、折り目をつけてあげれば四つ折りができ、しかもパックの内側背中部分にも収納可能!
 今まで外付けしかできなくて、テクニカルな薮漕ぎを要するトレイルの移動なんかではかなりうっとおしく感じたがそれも解消された。
 
 ファーストサンプルはノーマルのマットだったので、断熱的には何の問題も無かったが、正直、マット表面がキズに弱く、少々、耐久性に難ありという感じだったが、その後、「山と道」さんの技術革新により、マット表面にプレス加工が施され、耐久性がアップしてキズが目立たなくなり、嬉しいことに断熱性も向上し、言う事無しの出来映えとなった。
 最終的な製品のサイズを最後まで迷った。軽量化とコンパクトさを重要視すると、ギリギリのサイズで80×45㎝だと驚愕の44gがベストだと思ったが、様々な方々が使えるようにと考えると、切り詰め過ぎても良くないので、90×5045?)で、自分でカットしてカスタマイズできるようにした。


  
山と道 北野さんが感じられたこの商品の利点と弱点など教えてください。

SHMW 軽量コンパクトさを重要視する方であれば、そのままの単体使用で、どの位の気温で、どの位の寝袋や服装で寝れるのかを各人で人体実験をする必要がある。
  自分自身を知り、それに合わせて、別のエアーマットを併用したり、全然寒さに耐えられない方はメインをエアーマットにして、このミニマリストパッドをサブやブースターとして使用していただくのが良い。ファストパッカー、トレイルランナー向けに考えて作っていただいたマットであるが、通常のハイカーやULハイカーにも、今までのマットにプラスしてブースターとして使ったり、デイハイク時のラグジュアリーな休憩用マットとして、多くの人が使えるアイテムである。


                                              


ミニマリスト・パッドの使い方


当初はトレイル・ランナー、ファストパッカーの為のマットとして開発してきました。でも実際に出来上がってきた試作品をいろいろと使ってみるとハイカーとしても以下の点で面白い道具であると思いました。


●既存のマットと併用して使う。





ロングサイズのマットを持っていきたいけれども、大きくかさばるので諦めていた。という方には、コンパクトに収納出来るミニマリスト・パッドとの併用はいかがでしょうか。既存のマットと部分的に重ねて使用すると、一番荷重がかかる腰部分のクッション性を良くする事も出来ます。




折り曲げて使う。


5mmと薄いパッドは柔軟に折り曲げる事が出来ます。折り曲げる事が出来る事によって以下のような使い方が出来ます。


ミニマリスト・パッドを4つ折りにすると、厚みは2cm、大きさは50x25cmとなり、寒い場所での補助マットとして使えば、地面、雪からくる冷え込みをシャットアウトし、クッション性のあるマットとして使う事が出来ます。






寝ていて一番寒さを感じる腰の部分を折り返して使います。背中の部分は山と道BackPad15を使い、足下部分はザックを置く。折り返す事によって腰の部分のパッドの厚みは10mmになります。また縦に折れば、100cmx25cmx1cm、スリーピングマットの中に入れて使用すれば、多少ズレなどを直しながら、背骨から腰にかけての大事な部分を保護する事が出来ます。BackPad15と併用すれば、超軽量、コンパクトな装備でありながら、必要十分な厚みを、必要とする箇所に持たせる事が出来ます。




1泊2日のU.L.装備泊であれば、クローズドセルのマットでありながらも、コンパクトに装備を小型ザックに収納する事が出来ます。写真は今月発表予定の新作「山と道 mini(仮)25L」。この小型ザックには、背面パッド、フレーム、そして世界最軽量のマットとして、ミニマリスト・パッド(若干サイズが小さくなります。)が基本装備で収納される予定です。



●世界最軽量のマット







1)山と道ミニマリスト・パッド 
重量:53g サイズ:100 x 50 x 0.5cm

2)山と道U.L.Pad15s 
重量:75g サイズ:100 x 50 x 1cm

重量:127g サイズ:150x 50x 0.48

重量:140g サイズ:122x50x0.4cm

5)リッジレスト・Sサイズ
量:260g サイズ:119x51x1.5cm


 寒冷期のマットの組み合わせとして、山と道U.L.Pad15sと組み合わせの場合128g。
山と道BackPad15(H48cm)18gと組み合わせると71g。超最軽量、コンパクトなマットのシステムが出来上がります。

快適性よりも軽量性を重要視するファストパッキングでないかぎり、単独使用ではなかなか使えない事を考えると、単独で山中泊が出来る山と道U.L.Pad15sの方が最軽量のスリーピングマットとしては現実的な選択かもしれません。




最軽量、コンパクトな装備で山に行きたい。
必要最小限の装備で最大の効果を発揮出来る道具を使いたい。
非常用装備として使いたい。
スマートに中・小型ザックのフレームとして使いたい。

以上のような要望にミニマリスト・パッドは答える事が出来ると思います。
山と道ミニマリスト・パッドは近日、スカイハイマウンテンワークスと山と道オンラインショップで先行販売を行います。

初回発送分に関しては、4月22日〜24日に発送を行う予定です。
初回発送後も定番商品として販売は行っていく予定です。
宜しくお願い致します。



4.14.2012

山と道 YAMATOMICHI Te ARAROA Section Hike Report.







Music Mils / 0524, 0053
Camera GoPro HDHERO2
*オートシャッター機能を使って撮影をしました。

4.02.2012

山と道 Te ARAROA報告会 4月13日(金)19:00 渋谷soft


終了致しました。
お越し下さったお客様誠にありがとうございます。
準備に至らない点が会った事深くお詫びします。
後日ブログにて発表した内容を公開してゆきます。
宜しくお願い致します。


報告会は渋谷東にあるContemporary British pub「渋谷soft」にて開催します。報告会はビールを片手に気軽にご参加ください。

山と道の二人は、山と道の道具の事、ハイキングをより深く理解する事を目的に、201112月に開通したばかりのニュージーランドのロングトレイル「テ・アラロア」をセクションハイクしてきました。約1月間かけて歩いてきた距離は575km。ニュージーランドではハイキングの事をトランピングと呼びます。登山道を歩くというよりも、時には道も無く、峠を越えて、谷を越えて、川を越えて、湿原を越えて、草原を越えて、大自然の中を歩いて行く....。冒険的要素たっぷりの山歩きの魅力がトランピングにはありました。

SOFT HIKE 01
山と道 Te ARAROA報告会
日時:4月13日(金)
場所:渋谷soft
http://bit.ly/HJiZmq
http://www.soft-tokyo.com/
入場料:1000円(1ドリンク付き)
*カウンターにて1ドリンクと共にご注文ください。
19:00開場 
20:00報告会開始


◯テ・アラロアとは
2011年12月にオープンしたニュージーランドの北島の北端にあるCape Reingaから、南島の南端にあるBluffまで3000kmにも及ぶロングトレイル。
http://www.teararoa.org.nz/

◯歩いてきたトラック

Kepler Track 60.1km
MAVORA WALKWAY(Te ARAROA) 51km
CASCADE SADDLE ROUTE 61.5km
Outlet Track(Te ARAROA) 12km
Hawea River Track(Te ARAROA) 12km
Gladstone Track(Te ARAROA) 6.8km
Breast Hill Track(Te ARAROA) 53.3km
East Ahuriri Track(Te ARAROA) 24.4km
Lake Ohau Track(Te ARAROA) 33km
Cass Saddle-Lagoon Saddle Track(一部Te ARAROA)30km
Klondyke Track(Te ARAROA) 9km
Mingha - Deception Track(Te ARAROA) 24.4km
Harper Pass Track (including the Tui and Flood Tracks/Te ARAROA) 86.5km
Waiau Pass Track(Te ARAROA) 113.6km

4.01.2012

Mavora workway(Te araroa)02


1月8日

マヴォラ・レイクから離れて、さらに奥へと進んでいく。車が入れない道ではあるけれども、4WDの車の跡が、次の小屋Boundary Hutまで続いていた。


Boundary Hutは小さな小屋で、ビジターブックを見るとネズミがいると書いてある。少し休んでいると、屋根裏をネズミが走る音が聴こえてくる。
小屋を出て道沿いに進んでいく。すると、歩いている道と地図が合わない事に気がついた。
正しいトレイルはどこだろうか?


そこで、今回の旅の為に用意した道具を使う。ニュージーランドに入る前に、GPSとして使えるようにアップルストアでニュージーランドの南島の地図を購入しておいたのだ。普段は電源を消費しないようにiPhoneを機内モード(全てのアプリケーションを落として機内モードにしておくと、電源消費がほぼゼロになる。)にしておく。必要な時に機内モードをOFFにすると、携帯の電波が入らない場所でも、GPSが起動して今いる場所を指し示してくれる。場所は100m...50m...と精度を高めてゆき、最終的に誤差5mまではっきりと自分のいる場所が分かる。地図には、山の等高線も山道も描かれてる。ただし、古い地図らしく、場所によっては、テ・アラロアの道や小屋は表示されていなかった。今回用意した道具の中で一番使えたのが、iPhoneとこの地図だったように思える。


 iPhoneで今いる場所を確かめると、歩いていた道とは違う場所に橋があるようだ。
道から外れて地図をたよりに探すと、小屋の近くに一人用の小さな吊り橋を見つける事が出来た。吊り橋を越えると....またもや道はなくなる。マヴォラ・リバー・トラックと同じく、所々胸元まで伸びた草原と湿地の中に、ここがトレイルである事を示す赤いポールが100m〜200m間隔ぐらいで刺してある。




湿地帯の歩きにくい原野を、ポールと地図をたよりに進んで行く。足下は草によって見えにくい。そして、ニュージーランドの日差しはとても強い。オークランドでお会いした松本さんから、「紫外線が日本より7倍も強いニュージーランドを1月も歩く事で山と道の道具がどのように耐えられるのかがとても気になります。」と伺っていた。外にあった洗濯バサミがすぐボロボロになったとも聞いている。足下のストレスと、日差しのストレス。当初は恥ずかしがって傘を日傘として使う事に抵抗のあったyumiも、あまりにも日差しの強さに、二人して傘をさして歩いた。僕が使っていた傘Swing Lite-Flex Umbrellaは、シルバーコーティングされていて、日差しを大幅にシャットアウトしてくれる。これだけでとても涼くなる。日影が少ない日本の稜線でも、日傘としても使える傘は有効的だと思う。風の強い場所では、ぐにゃぐにゃに曲がるので、雨を防ぐ事は出来なくなるが、折れる事は無かった。





誰もいない。時々牛の白骨と出くわす。日本の山とはまた違う荒々しさ。道無き広大な原野を歩いていく。心象風景を歩いているような...まるで物語の中に迷い込んだような気分。ロード・オブ・ザ・リングや、ウエスタン映画(明日に向かって撃てを思い出した。)を思い出す。








所々僕たちの道を遮るようにブッシュが広がっている。(上の写真にある緑色の部分)固く針のように尖ったブッシュをかき分けて歩くのはとてもつらい。ニュージーランドにはこのブッシュのような尖った植物が多くある。バックパックの耐久性を知るテストとしてはとても良い立地だったとも言える。



いきなり有刺鉄線が現れる。まさか有刺鉄線を越える事があるとは思わなかった。バックパックを柵の向こうに放り投げて越えていく。誰もいないような原野であるけれども、時々牛の家族に出会う。当初は迷い牛かと思っていたが、この広大な原野を牧場としても使っていると後から知った。牛が逃げないように管理しているのだろうか。




小川が山から流れているので、水に困る事は無かった。途中少し大きな川があったので、熱さを涼んだ。





コースタイムよりも多くの時間がかかった。遠くに目的地の小さな小屋を見つけた時(上の写真の遠くの山の下に小さな小屋を見つける事が出来た)はとてもうれしかった。


小屋の手前に川が流れていて、一人用の吊り橋を越えてTipo Hutにたどり着く。


 


Tipo Hutは、こじんまりとした小屋だった。吊り橋を越えた事でさらに異世界に入り込んでいく気分になる。この場所から感じる異境感は特別だった。


 小屋にはテ・アラロアのマップも張ってある。ビジターブックを読んでいても、ついついテ・アラロアを歩く人の記録を追ってしまう。
 食事の準備をはじめようとした所、大変な事にパンにカビが生えている事に気がついた。熱さのせいでカビが生えたのだろう。うかつだった。もっとハードなパンにするか(見た目はハードだったんだけど...)、個別包装されたパンを持っていくべきだった。メインの食材を失う事で、行程を見直さざるを終えなくなる。予想以上に疲れも感じていたし、コースタイムよりも遅れていたので、当初の計画を見直し、テ・アラロアの正式ルートを歩いてグリーンストーン・トラックを抜ける事に決める。


 夜には、誰もいないはずなのに、吊り橋を渡るような足音で目が覚めた。おそるおそる窓から外をヘッドライトで照らすと、ベランダにポッサムが来ていた。僕に気がついたみたいで、鳴き声を上げて威嚇する。月あかりが青白く山や原野を照らしてとてもきれいな夜だった。



1月9日






写真のような美しい湿地帯を歩いていく。足が沈まないよう気をつけながらも、踏み歩いてしまって良いものかと思う。歩く人も少ないから、自然に与えるインパクトと回復する自然とのバランスが取れているのだろうか...。



湿地帯に、草原、ブッシュ。写真で見ると優しい雰囲気を感じるが、実際に歩いて行くのは大変。途中からまた車の跡のような道を発見する。iPhoneの地図でもこの道を確認をする事が出来た。だが、テ・アラロアのポールはこの道を差してはいなかった。テ・アラロアは、あえて古くからある山道を通らず、厳しい原野や森を歩くようにしているようだ。僕たちは迷わず、テ・アラロアのポールに逆い、道沿いに進んでいく事にした。とても早く、気持ちよく歩ける。道は偉大だ。


 グリーンストーン・ハット


途中森の中で道を見失う。どうにか地図とマーカーをたよりに、テ・アラロアに復帰して、グリーンストーン・トラックに合流する。このトラックは、この先のグレートウォークの一つ、ルートバーン・トラックよりも緑がとても美しいと評判のトラックだ。




グリーンストーン・ハットは有名なトラックだけに立派で大きな小屋だった。ここで、グリーンストーン・トラックを抜けて、終点のグリーンストーン・カーパークに着いた後に、どうやって街へ戻るか情報を探ってみた。小屋に置いてあるファイルに山から街へのアクセス情報などが書かれていた。1日に一便定時のバスがあるようだが、今からでは出発時刻に間に合わない。小屋にいた地元のカップルに、ヒッチハイクについて聞いてみると、車も通らないのでヒッチハイクも難しいと言う。それでも山を降りて10km程歩けば、キンロックという場所にあるYHA(ユースホステル)に着く事が出来る。僕たちはグリーンストーン・カーパーク向けて歩いていく事にした。



グリーンストーントラックは、日本の上高地のような印象を受けた。川沿いの美しい森、山を歩く事が出来る。今のように林道が開発される前の上高地はこんな雰囲気だったではないかと思う。



終点のグリーンストーン・カーパークには車が10台程止まっていた。トイレがある以外には殺風景な場所だった。車がくる気配も無い。砂利道を歩き、湖との合流地点で車を待つ事にする。20分程待っていると、小屋で会ったカップルの車がやってくる。彼等は申し訳無さそうに、車は荷物でいっぱいなので、乗せられないと言う。確かに僕らが乗れるようなスペースは無かった。さよならを交わしているうちに、後ろからもう一台やってくる。ヒッチハイクのサインを出すと止まってくれるではないか。そして、僕らが向かおうとしていたYHAまで乗せてくれるという。予想以上に早くヒッチハイクが成功して本当にうれしかった。彼も本当に僕が通ってよかったね。と言っていた。ドイツ人の若い指揮者で、日本にも来た事があると言う。前に乗せてくれた人もそうだったが、乗せる前に、日本人と確かめた上で乗せてくれているようだ。長期の休暇でオーストラリアとニュージーランドを楽しんでいると話してくれた。車は古いマツダで、1000ドル(6~7万円程)で購入したと言っていた。帰るときに売って帰るらしく、いくらで売れるかを気にしていた。長期の滞在では車を買って、帰るときに売ってしまうのは良い手かもしれない。





キンロックのYHAは印象的だった。水色に輝く湖畔にレストランが併設されたYHAがあるだけ。立派なリゾートホテルだ。ホットスパもある。
 到着するなり、ビールで乾杯する。夕食は予約制だったらしく、食事も美味しそうだったけれども、予約をしていない僕たちは食事を取る事が出来なかった。ワインをボトルで購入して余った食材をラウンジで食べる事にした。



YHA(ユースホステル)は世界80カ国に4000カ所以上もある世界最大の宿泊施設ネットワークで、施設内には大きな共同キッチンと、ラウンジスペースがある。宿泊形態としては、相部屋か個室を選ぶ事が出来るが、シーツなどの交換は自分たちでする必要がある。宿泊値段も安く、なによりも、キッチンを使って気軽に自炊が出来る事と、一人での旅であれば、相部屋で一緒になった人と情報を交換したり、旅を共にする仲間を見つける事も出来る。若い人だけでなく、年齢差関係なくユースホステルを有効的に使っている人が多かった。部屋は狭くても、ラウンジの雰囲気がとても良かったりして、狭いホテルなんかよりも、自由に広く楽しめた。ニュージーランドにはこのYHAの他にBBHBackpacker Budget Hostel)というホステル・ネットワークがある。こちらは、個人経営のホステルの集合体で、数も多く安いが、個人経営だけに、良いホステルと悪いホステルの差が大きいようだ。その点、YHAは地方ごとに数は限られるが、きれいで、クオリティが高いと評判。僕たちはYHAをとても気に入りここでYHA会員(割引価格で宿泊出来る)になった。


今回のハイクを振り返ると、終盤に歩いたグリーンストーン・トラックは、評判通りの美しいトラックで歩き易くとても楽しいハイクを楽しむ事が出来た。それでも、歩き終えてみると、より心に染み込んで印象的だったのは、不思議な事に、誰もいない荒々しいマヴォラ・ウォーク・ウェイの原野だった。とても大変なハイクではあったけれども、心に染み込むハイクを終える事が出来た。