12.09.2013

「第3回鎌倉ハイカーズミーティング」の振り返り vol.1

2013年11月23日(土)勤労感謝の日、今年で3回目を迎えた「鎌倉ハイカーズミーティング」が開催されました。例年であれば、この振り返りを書くのは主催者である山と道の夏目さん。しかし、イベントの拡大に伴う諸般の事情により、今回、わたくしライターの根津(プロフィールは文末を参照ください)が担当することになりました。よろしくお願いいたします。

今回も大盛況のなか無事終了したこのイベント。都合がつかず足を運べなかった・・・参加したもののお目当てのコンテンツを見逃した・・・興味はあるけど遠方すぎる・・・そんな方々もいらっしゃったことでしょう。

そこで、これから3回にわたって、「第3回鎌倉ハイカーズミーティング」を振り返ります。参加した方もそうでなかった方も、このレポートをご覧になって「鎌倉ハイカーズミーティング」を体感し、何かしらの参考にしていただければ幸いです。



【鎌倉ハイカーズミーティングとは?】


山と道が、ハイキングカルチャーを広めるべく主宰しているイベント。同ブランドがウルトラライト系のガレージメーカーということもあり、根底にあるのは「ウルトラライトハイキング」の考え方。ただ、ULに限定しているわけではなく、それも含めハイキング全般について、その魅力を伝えていくことが目的である。

さまざまなアクティビティとこの場を通じて、山に行ったことがない人にハイキングの面白さを知ってもらったり、すでに経験がある人にハイキングの多様性を感じてもらったり、ハイカー同士が交流しあったり・・・。ひとり一人が新たな発見をし、ハイキングをもっともっと好きになる。そして日本に文化として根づいていく。それが山と道が抱きつづけている想い。

「鎌倉ハイカーズミーティング」は、ハイカーの、ハイカーによる、ハイカーのためのイベントなのである。



【アクティビティについて】


植物学者と歩く鎌倉ぶらハイク




「鎌倉宮〜獅子舞〜天園〜たからの庭」約6kmのセクションを植物学者である佐々木知幸氏と一緒に歩く、鎌倉ぶらハイク。このアクティビティでは、「トレイル上の植物たち」にフォーカスすることで見えてくるハイキングの魅力を味わった。

佐々木氏は森林生態学の専門家とあって、植物そのものだけではなく、土壌をはじめとした環境との関わりによって生まれる生態系にも詳しい。ひとつの植物から話がどんどん広がっていくため、驚きと発見の連続だった。


たとえば、参加者がサザンカを見てツバキと間違えたとき。
サザンカもツバキ科であり見た目はそっくり。学名はカメリアサザンカ、一方ツバキはカメリアジャポニカである。という話から始まり、ツバキはサザンカより葉が厚く、厚い葉っぱの木→アツバキ(厚葉木)→ツバキとなったという語源(諸説ある)に移り、さらにはツバキ油にも言及し生活との関わりへと転じていった。

また、ヨシ(葦)が生えているところでは。
ヨシとアシ(葦)は同じもので元々はアシと呼ばれていたが、「アシ=悪し」に通じるのを避けてヨシに変わった。あの吉原も、遊郭がアシが多い低湿地にあったので葦原(アシワラ)となるところを縁起をかついで吉原に(諸説ある)。たしかに楽しい夢の国なのでアシでは具合が悪いよね、と話す。

さらに、鎌倉では普通に生息しているというヤマトリカブトを見つけて。
トリカブトゆえ致死性の猛毒を持つ。さいわい鎌倉でこれによる殺人事件は起きていないようだ。ただ、トリカブトは地域によってDNAが異なるため、たとえ悪事に使ったとしても科捜研で調べたら足がついてしまうので注意したほうがいい、と冗談半分で促す。

もちろん、ここで挙げた話はほんの一部。6㎞のコースを3時間かけて歩き終えたときには、鎌倉の生態系だけではなく、日常生活や文化、歴史にまで詳しい知識人になったような気がした。


ハイキングの魅力は人それぞれである。ギアやウエアにこだわる人もいれば、食事にこだわる人もいる。 仲間とワイワイを好む人もいれば、独りならではの自由を好む人もいる。そもそも歩くこと自体が楽しいという人だっている。そして今回のように、植物や生態系を味わうのも大きな魅力のひとつである。

植物に興味がないハイカーも、きっと心動かされるはず。
ハイキングの世界は、大きく、広く、そして奥が深い、と改めて実感させられた。




MYOG 自作アルコールストーブを作ろう



昨年の鎌倉ハイカーズミーティングでも好評を博したこのワークショップ。講師はブログ「山より道具」でもおなじみ寺澤英明氏。彼は、2000年初頭からUL山道具にハマり、海外ガレージメーカーの道具を購入してレビューしつづけてきた人物。日本にULを広めたひとりである。

MYOGとは、Make Your Own Gearのこと。要は自作である。自分にとって使いやすい道具を自分でつくる。 このスタンス、精神はウルトラライトハイキングを支える重要なファクターでもある。

なかでも手軽につくることができるのが、アルコールストーブ。さまざまな種類があるのだが、今回選んだのはゴトク不要の「サイドバーナージェット型」。

このストーブ、なんと500ccの空き缶1本でつくれてしまう。工具もすべて100円ショップで手に入る。つくり方については、寺澤氏の著書「ウルトラライトハイキングギア」に詳しい。また、アルコールストーブのガレージメーカー「T's Stove」のサイトも参考にしてみるといいだろう。

参加者の多くは自作未経験者。寺澤氏が丁寧に手順を説明しながら一緒につくっていく。分からない箇所があればすぐに教えてもらえるので、初めての人も30〜40分程度で見事完成。その後、燃焼実験に移る。自分でつくったアルコールストーブからきれいな青色の炎が立ち上がると、感嘆の声があがった。自分で自分の道具をつくる、これは想像以上に楽しい行為なのである。


“自作”はULハイキングの第一歩でもあるし、つくることによって道具への理解が深まり、使い方もより習熟し、そして自らのハイキングのスタイルが確立されていく。今年参加できなかった方は、ぜひ来年参加してほしい。




シルクスクリーンワークショップ




シルクスクリーンとは、インクが通過する穴とインクが通過しないところを作ることで版画の版を製版し、印刷する技法のこと。ワークショップでは、この技法を用いて、各自が持参した無地のTシャツやトートバッグにプリントをした。

講師は、ガレージメーカー「ハリヤマプロダクション」の三浦卓也氏。参加者が各アイテムに印刷し、自分だけのオリジナルグッズをつくるのである。


アルコールストーブのように100円ショップの道具で・・・とはいかないが、自作の楽しさを実感できる貴重なワークショップ。ここでしか手に入らないデザイン、どこにも売っていない商品だけに、完成した際には参加者全員が満足感でいっぱいの表情をしていた。

オール既製品ではなく、自分でつくったものと一緒にハイキングに出かけてみる。そこにはきっと、新しい発見とたくさんの楽しさが待っているはずだ。


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根津さんありがとうございます。
来週月曜日に第二回へと続きます!!(夏目)





筆者プロフィール

 

根津 貴央(ねづ たかひさ)

1976年、栃木県宇都宮市生まれ。アウトドア関連の雑誌を中心に活動するフリーランスライター。2012年、2013年と連続でアメリカ3大ロングトレイルのひとつ「パシフィック・クレスト・トレイル(PCT)」を歩く。2012年のときに山と道サコッシュを使っていたことがきっかけで、夏目夫妻と知り合う。現在、BE-PALのWEBサイトでPCTの紀行文を連載中。Facebookページはハイカー根津