8.29.2011

JMT Section Hike 8日目

2010. 7/17
山の天気がとても気になっていた。もし、山の天気が悪いようなら、出発を延期しようかとも考えていた。早朝早く起きて、湖の方に行き、釣りをしながら山の天気を見ていた。


山の天気は良さそうだ。また夕方になれば、悪くなるかもしれないが、楽しく歩く事は出来そうだと思い、出発する事にした。食料を受け取り、カメラのバッテリーが切れそうだったので、「写ルンです」を買ってみた。その他、足のケア道具などを買い足す。 VVRは思っていたよりも....お金がかかりました。


9時頃に、水上バスは出発する。水上バスには、MLDを背負っているハイカーがいた。フロントのメッシュポケットに大きなかわいいぬいぐるみを入れている男性のソロのハイカーだった。湖を水上バスは気持ちよく進む。対岸には、レッズメドウの先で出会ったハイカー二人組が、手を降って水上バスの到着を待っていた。彼等は、上半身裸の上に、コンビニで売っているようなビニールのカッパをレインギアとして使っていた。樹林帯の夏とはいえ、昨晩は大変だったんじゃないのかなと思いつつ、その出で立ちのパワフルさに魅力を感じたりもした。


水上バスから降りると、各自のペースでトレイルへと復帰する。延々と繰り返すスイッチバックを歩き、約600m程標高を上げていく。登りきると気持ちよい平坦なトレイルになる。太陽も降り注ぎ、あまりにも気持ちが良いので少し昼寝をする。峠を越えるように歩いた先には、また新しい山々が開けている。次の峠セルダンパスを目指す。


また植生が変わってくる。ポプラのような丸いとてもかわいらしい木々が増えてくる。風にゆれるととても気持ちよくなびく。色も淡い黄緑で本当に美しい。またセイジがたくさん生えていて良い匂いがする。ヨセテミの松や杉などの針葉樹林にはじまって、少しずつ植生が変わってくるのもJMTの楽しさだと思う。


水作り。放射能も除去するセイシェルという浄水器を使った。押しやすいと評判の浄水器だったが、それでも水作りは大変。残雪期の雪解け水が溢れているこの時期はどこでも水が手に入るが、雪が消えてしまうと、水は手に入りにくくなるのかもしれない。


午前中はとても天気が良かったが、午後になるとまた崩れてくる。同じような天気が繰り返すのかと思うと不安になる。


川?? いえいえ、トレイルです。僕らは非ゴアのトレランシューズを履いて歩いていた。こんな所をずっと歩いていると、足が乾いている状況はほとんど作れなくなる。ゴアテックスのハイソックスを1足持って行けば良かったと思った。この頃には、足もだいぶぼろぼろになり、まめ、水ぶくれ、擦れなどを、絆創膏などの救急道具でどうにかケアしながら歩いている状況。ならば、ゴアテックスの靴はと思うかもしれないが、渡渉が多いので、普通のゴアテックスの靴では、水が入ると今度は水が抜けなくてバケツのような状態になってしまう。固めの登山靴だと、これだけの距離を歩くとなると早々に足が擦れてマメが出来そうな気がする。非ゴアのトレランシューズが基本にはなると思う。足の状態が悪くても、ケアをすれば、靴が柔らかいので傷をあまり圧迫せずどうにか歩く事は出来る。道行くハイカーの大半は、トレランシューズを履いていた。サロモンが人気高かったように覚えている。


 一旦山を下り、美しいと評判のマリーレイクを目指す。VVRで噂になっていたエヴォリューションクリークをyumiは怖がっていた。過度に恐がりすぎたせいかもしれない。そして、その当時、沢歩きの経験も無く、流れが強い川を渡る対処方法を間違えてしまった。それは、ベアークリークという川で起こった。





流れが大変強く、太もも程の深さのある川だった。バカ正直に、向こう岸に続くトレイルを目指して、川の中に入ってしまった。何かあったときに、すぐに対処出来るようにと、yumiを先行させてしまった。流れが強いからゆっくりと確実に歩かなくてはならない。「ゆっくりと確実に」という声を出すも、yumiは焦ってしまい、早く渡りきろうとしてしまった。そして、流れに足を取られて、yumiは川に流されてしまった。僕はすぐに追いつこうと、川の中を走り出していく。数m程流されてyumiは対岸に流れ着いた。本来は、安全に渡れる渡渉場所を探すか、スクラムを組んで渡渉すべきだった。


 ずぶぬれになった服を脱ぎ、着替える。流されたばかりで落ち込んでいる中、追い打ちをかけるように、道行くハイカーは、「エボリューションクリークは気をつけろ!」と、こちらは何も言っていないのにしゃべってくる。この先に、流されたベアークリークよりもすごい川が待っているらしい。そして、また雷が鳴り出し雨が降りはじめた。身体も濡れた後だったので、早々にタープを張って雨宿りをする事にした。タープの中でアルコールストーブに火を付ける。それだけでかなり暖まる事が出来た。元気の良いハイカーは上半身裸でへっちゃらで歩いていく。1時間程して小雨に変わったので、またトレイルを歩き出す。yumiは気持ち的にかなり落ち込んでいる事だろう。景色は樹林帯を抜けて、高地の景色へと変化していく。すぐに晴れ間が広がり、日が暮れる前の気持ちよい空が広がる中、19:30頃マリーレイクに到着した。


素晴らしく美しい湖だった。ずいぶん心が慰められる。水辺から少し離れた所にタープを張り、濡れた服を干した。早速、釣り竿を取り出して、釣りを始める。きれいなトラウトがたくさん釣れた。


釣ってはリリースを繰り返しているうちに、1匹も釣れなくなってしまった。全てのトラウトを釣ってしまったのか、ルアーに魚が寄ってくるも、すぐにルアーに気がつき逃げてしまう。yumiも興味を持ってタープから出てきて釣りをしてみる。すでに時遅し。1匹も釣れる事は無かった。


トイレを探しに、奥の方に入っていく。見渡すかぎり誰もいないと思っていたけど、木に隠れてキャンプをしているハイカーが見えた。彼等のキャンプサイトの近くでトイレをする所だった。


夕焼けがはじまる中、ご飯を食べる。マリーレイクは、1万フィート(約3000m)を越えるので、焚き火をする事は出来ない。今日は、本当にたくさんの事があった。

行動距離 21.2km

8.25.2011

JMT Section Hike 7日目

2010. 7/16
今日は、シルバーパス3322mを越えて、VVR(Vermillion Valley Resort)という宿泊施設を目指す。この施設は、LAKE THOMAS A EDISONという大きな湖を、水上バスで越えた先にある施設で、JMT、PCTを歩くハイカーの支援をおこなっている。事前に、補給用食料をこの施設に送っておくと、現地で受け取る事が出来るのだ。僕らは今回のハイキングで、トゥオルミーメドウと、このVVRの2カ所に食料を送っておいた。実際歩いてみると、前半部分は食料の調達も現地で十分に出来るので、2カ所も送る必要は無かったかもしれない。


この区間のトレイルでは、僕たちは2つの問題を抱えていた。一つは、VVRへ行くための水上バスの出発スケジュールが、午前中9:45と、夕方16:45の2便しかなく、僕たちは、夕方の16:45までに水上バスの出発場所に着かなくてははならない。もう一つは、シルバーパスの先の川の渡渉が困難であると事前に情報を得ていていた事だ。もし、間に合わなければ、今回のハイキングの行程、スケジュールの見直しを考えなくてはならない。


僕たちは、出発時刻に間に合わせる為に、いつもよりも早く起きた。外は雨だった。天気予報が浮かぶ....。止まないかと願い、少し出発を遅らせてもみたが、なかなか降り止む気配は無かった。仕方が無いので、まだ暗い中を出発する事にした。気持ち的にもだいぶ焦っていたのかもしれない。僕はここで、間違いをおかしてしまう。


パープルレイクから、JMTに戻るのに、間違えて別のトレイルに入ってしまったのだ。焦っていたのと、朝で頭が動いていなかった事、これまでのトレイルがすごく分かり易く安心してしまい、別のトレイルとの交差点という事を見落としていた事。いろいろとある。随分と歩いた後に、どう考えても地図と地形が合わない事に気がついた。基本、間違えた場合には戻る事が鉄則だが、戻って、トレイルに復帰した場合には、時間をロスして出発時刻に間に合わなくなる可能性が出て来る。地図では、少々迂回する形にはなるが、谷に降りて、また山を登る形で、JMTに復帰出来る事から、先に進む事にした。点線のトレイルには、本当に誰もいない。となると、あたりまえのように、トレイルも荒れている。僕たちは途中大きなショックを受ける事となる。雨の中、目の前に、幅が約20m程の川が現れたのだ。雨で水も増水している。そして、なによりも、驚いたのが、向こう岸にトレイルの続きが見当たらないのだ...。水は、深い所で太ももぐらいの深さ、それでも渡れない事は無い。川を渡渉してどこに上がれば良いのか分からないまま、渡渉を開始する事にした。木々が生い茂っているので、川の中で上陸地点を探しながらの渡渉だ。ビーバーの巣のように、木々が固まっている場所から上陸出来そうだったので、無理して木の上に這い上がり、薮をこいでいく。すると、ほどなく、人の足跡を発見する事が出来た。その足跡を追いながら、無事トレイルに復帰する事が出来た....。








雨が降っている事、道を間違え、谷に降りて山を登り返している事、困難な渡渉をした事、そして蚊があまりにも多い事。積み重なって、心身的にかなりつらいムードが漂う。歩き続けるうちに、越えるべき峠が、見えはじめてきた。そして、ようやくJMTに復帰出来た。本当にうれしかったなw そうしているうちに、ハイカーとも出会うようになってくる。あるハイカーは、地下足袋を履いていた。単独行の加藤文三郎のようだと思い、話をしてみると、通常の登山靴とは別に渡渉用に地下足袋を持ってきているとの事。


途中雨も降り止まないので、VVRに行くのをあきらめて、ビバークしようかとも考えた。さっとタープだけ張り、アルコールストーブに火を付けて、軽く朝食などを食べながら、休んでいると、雨が降り止んだ。本当にうれしいね。とお互いに思いながら、シルバーパスを目指す。




シルバーパスの頂上付近になってくると雪が出てくる。雪はだいぶとけていて、歩きづらい。
ようやく、シルバーパスを越える。峠の向こうにはまた、新しい山の世界が広がっている。既に、アンセルアダムス国立公園を越えて、ジョンミューア国立公園の中を僕たちは歩いている。山頂には先程の地下足袋のハイカーや、JAMを背負ったハイカーが休んでいる。挨拶を交わす。みんな、シルバーパスからの雄大な景色を存分に味わっている。彼等はパスの付近に今夜は泊まるらしい。だが、雲行きはまたおかしくなってきている。僕たちは、先を急ぐ事にした。




シルバーパスの先は、カールした地形や、高地の湖が大変に美しかった。やがて、事前にチェックしていた問題の渡渉地点にさしかかる。


渡渉はなんて事はなかった。時期の問題か、チェックした場所を間違えたのか...どうやら後者のようだった。


途中から、大きな岩石で出来た地形から所々木々が生えている場所に入る。右側が切れていて崖になっている箇所を、スイッチバックしながら、谷へと降りて行く。そのトレイルの途中に、滝が流れている?? どういう事かというと、トレイルの山側が滝、幅が3mあるか無いかのトレイルに流れ落ちて短い川を作り、そのまま右の崖に流れ落ちてさらに滝を作っている。地図を見ると確かに川は描かれている。水も別に深いわけでは無いので、問題は無いのだけど、正直、こんな所を歩くんだ...と思った。転んで流されたら終わり。面白いと思えば面白いトレイル。


先を急ぐ。どうにか時間には間に合いそうだと感じていた。雲行きはさらに怪しくなる。雷も聞こえ始める。そして....いきなりのゲリラ豪雨がはじまった。 豪雨と雷が襲いかかってくる。あたり一面に雷が落ちている。光ってすぐに轟いている事から、まさに、雷雲の下にいる事が分かる。山の上からトレイルを伝って濁流が流れてきて、トレイルは川となった。どこに避難すれば良いのか....迷いながらも大きな木の下をさけて、じっと雷雲が抜けるのを待つ。レインケープも、レインジャケットも豪雨には太刀打ち出来ない。ゲリラ豪雨は、夕立のようにじきに収まった。このままビバークするか、急いで、水上バスを目指して、この場所から離れるか....。身体も濡れている。時間的には押し迫っていたが、早く歩く方を僕たちは選んだ。先を急ぐ。


すると、ゲリラ豪雨の次には.....パチンコ玉サイズのヒョウが降ってきた。


こんな大きなヒョウに降られたのは、生まれてはじめてだった。痛い。痛い。少しでも当たらないようにと木の下に避難をする。ヒョウもすぐに降り止んだ。


なんという天気かw 逃げるように先を急ぐ。いくつか渡渉を繰り返す。水の増水もあり、流れも早かった。水上バスは定刻通りに出発するのか、そもそも、この天気でも出航するのかがとても気になる。湖にようやく着いた。JMTから一旦離れて、水上バスの発着所までのトレイルを歩く。距離が長く感じられた。どうにか無事定刻前に水上バスの発着所に着く。発着所には、僕たち以外にも出発を待つ人達があふれ、身体を乾かす為に焚き火をしていた。ありがたい。僕たちも焚き火の輪に混ぜてもらった。随分と身体が冷えきっていた事が分かる。焚き火の熱が身体の芯までなかなか入ってこない。
湖の方面は、青空が広がっている。雷雲がかかっているのは、どうやら山沿いだけのようだ。じきに出発時刻となり、湖から水上バスがやってくる。僕たちは水上バスに乗り込み、VVRに向かった。






VVRに到着する。ここは、ロッジと、テント場に分かれている。僕らはテント場を借りる事にした。まず、シャワーを浴びた。シャワーは、ユニットバスのような感じであまりきれいとは言いがたいが、暖かいシャワーを浴びれるのは本当にうれしいものだ。シャワーの他にも洗濯機など、たいがいの設備は揃っている。身体も心もあったまった所で、食事にする。迷わず僕はステーキを頼んだ。ビールも地元のエールビールを飲む。ハイカーに囲まれながら食べる食事は最高だった。色々なハイカーと情報交換をする。熊に会った事をうらやむドイツ人の高年のハイカー夫婦に会ったり、イギリスにも島を横断するロングトレイルがある事を教えていただいたりもした。ハイカーの一人は、偶然にも山と道がある鎌倉に以前ホームステイをした事があるという。その事実が分かると、周りから「Its a Trail Magic!」という声が弾む。トレイルで起きる奇跡の事をそう呼ぶそうだ。とても素敵な言葉だと思った。


そして、今後のトレイル情報も手に入れる。ハイカーの間で、エボリューションクリークの渡渉が大きな困難になるだろうと噂になっていた。水は太ももを越えて腰ぐらいまであるらしい。 その場所は予定では2日後に越える事になる...。


 みんなで焚き火を囲みながらビールを飲んでいると、山側に大きな虹が出ていると聞いて見に行く。山の天気と、山の外の天気の違いを実感する。シルバーパスに泊まると言っていたハイカーが無事なのかがとても気になる。それにしてもVVR はいい。ハイカーとの交流場所としても素晴らしいし、ハイカーの為の場所という雰囲気がある。ここで会った何人かは、僕らが、JMTを離脱するまでずっとトレイルで出会う事になっていくのだ。




行動距離29.5km

8.24.2011

JMT Section Hike 6日目

2010. 7/15
まずは、温泉を目指してレッズメドウへと向かう。yumiもだいぶ疲れていたので、もう、当初の計画通り進む事は考えず、レッズメドウの先を今日の宿泊地にしようかと考えていた。

レッズメドウの手前には、デビルズポストパイル(DEVILS POST PILE NAT'L MONUMENT)と呼ばれる小さな公園がある。この公園だけ、国立公園とは別の区域として管理されている。六角形の奇岩が有名な観光スポットになっているようだ。この場所にはレンジャーステーションもあるので、まずは情報を得る為に向かう。そこで、僕はyumiに知られたくない情報を得てしまった。まだ時間が早いのかレンジャーはいなかったけれども、レンジャーステーションの前には、今後1週間の天気予報が貼ってあった。その天気予報の、ほぼ全てに......雷マークが書いてある。本当か??? JMTはずっと天気が続いて、夏は雨が降らないとばかり信じていたので、正直驚いた...。


レッズメドウの無料の温泉施設

気を取り直して、(今は晴れているし)公園内を観光しながらレッズメドウへ向かう。待望の温泉施設は、レッズメドウのキャンプ場の奥にある。キャンプ場は、なんとなく普通のキャンプをする人達の集団と、ハイカーの集団とに分かれていたように感じる。朝も早かったので、温泉が開いてなかったらどうしようかと少し不安ではあったが、問題無い。温泉は開いている!

6日ぶりの温泉シャワーは....最高に気持ちよかった。身も心も洗われる感じ。暖かい、温泉のありがたみを、ものすごく実感出来る。シャワールームは、写真から汚そうな感じを受けるかもしれないが、それなりの雰囲気がある。暗くて、窓から入ってくる明かりで、少しだけ部屋の様子が見えるという感じだから、あまり気にならない。汚くても温泉シャワーを優先しただろうけどね。本当にありがたい素晴らしい施設だった。

シャワーの後は、売店、食堂を目指すべくレッズメドウリゾートを目指す。ここの売店に、事前にe-mailで、燃料用アルコールを購入出来る事を確認しておいた。施設間はバスが走っている。レッズメドウまでは、確かマンモスレイクという麓の街からバスで入れるかと思う。バスの停留所の近くで、日本人らしい高年の方がいらしたので、お声をかけてみると、日系2世の方だった。少し片言だけれども日本語で会話した。少しずつ、セクションハイクをしながら、JMTを歩かれているとの事。
バスを待つのもつまらなかったので、売店までの距離30分程をアスファルトを歩いて向かう事にした。

レッズメドウリゾートは、こじんまりとしたウエスタン風のリゾートだった。実際にホースライディングのサービスなどもされているようだ。早速、食堂に入る。お客は誰もいない。オレンジジュース、ベーコン、卵、パンのスタンダードな朝食をオーダーする。ここで飲んだオレンジジュース、卵の味は一生忘れないだろう。...というぐらい美味しく感じられた。毎日美味しい物を食べるのも良いけど、質素に暮らす事で、普段の生活のありがたみを感じる。レッズメドウでは、そんな感動を味わえたw

朝食の後は、売店に移動する。ここの売店は、トゥオルミーメドウ程、ハイカー向けの道具、装備は揃っていなかった。アルコール燃料を探しても見つからないので少し焦る。売店のスタッフに話してみると、燃料は奥にあるとの事。スタッフもあまり理解されていないようで、「多分これがアルコール燃料だと思うけど、匂いをかいで分かる?」というような感じ。僕らも不安だったので、他のハイカーの協力を得ながら無事購入する事が出来た。アルコール燃料は、好きな容量を購入出来る。日本から持ってきた最軽量のプラスチックボトル、コカコーラのイロハスのペットボトルに多めに入れてもらった。このペットボトルの優れているのは、軽いだけでなく、細かく分けられたボトルの段々で容量が分かる事。(最後は余らせてしまったので、予備用にメタを用意して、アルコール燃料は計画通りの容量のみを持つ事にすれば良かった。)後、ここの売店で面白いなと思ったのは、TAKE FREEと書かれた段ボールにハイカーの置き土産がたくさん積まれていた事(もしくはトレイルエンジェルだったのかな?)。カウンターの奥に置いてあるので、商品を購入したお客へのサービスなんだと思う。なので、スタッフに聞かないと分からないかもしれない。ここでハイキングを終わるハイカーのバックパックには、大抵、予備の燃料や食料が入っている。ハイキング中は貴重だとしても、終わってしまえば、重たく邪魔な存在になってしまうのだろう。僕ら以外の女性ハイカーも大喜びで段ボールをあさっていた。僕らも色めきたつけど、余分な荷物になるのは間違いが無いので、行動食用に、cliff barを少し手に入れる。スニッカーズのような感じだけど、たくさんの味があり、なによりも美味い!

今日はゆっくりと進もうと考えていたので、あまり焦らずにレッズメドウから出発する事にした。

レッズメドウの先は、土屋さん曰く、JMTでも一番つまらない区間だという。無惨に焼け落ちた山火事の跡が広がる。日差しを遮る森が無いので、とても暑い。

山火事跡をすぐに通過して、一気に標高を上げていく。日本だと大変な急登を強いられる事が多いが、JMTのトレイルではまず無い。いくだんにも永遠に続くかと思うようなスイッチバックが切られていて、ひたすら歩きながら標高を上げていく。予定では、登った先にある草原で今日はもう宿泊してしまおうかと考えていた。なぜなら後半はほとんど水が手に入らなさそうだからだ。(その他の区間はこの季節であれば、まず水に困る事は無い。どこにでもある。)スイッチバックを歩ききり、400m程標高を上げると、大変歩きやすいトレイルが続いた。つまらないと聞いていた割には、大変に歩きやすくて、とても良い感じだ。身体が慣れてきたのか、シャワーと食堂で元気が補充出来たのか、ぐんぐんと進んでいく。気が付くと、宿泊予定地をとうに過ぎてしまい、水も補給が難しい区間に入っていた。あまりにもあっけなく過ぎてしまったので、気がつかなかったのだ。後半は、右側が崖になっているトレイルを進む。所々、木の隙間から遠くの山々が見えるので気持ちが良い。イタリア人の二人組ハイカーと抜きつ抜かれつつ進んでいく。

そのうちに、天気が悪くなってきた。きれいな青空が広がっていたのに、空全体が灰色に暗くどんよりとしてくる。そして、すぐに雷を伴って雨が降り始めた。雷はすぐ近くに落ちているようだ。レンジャーステーションの天気予報が頭に浮かぶ。トレイルを先に急ぐも、先行していたハイカーが、みんな雷を恐れて避難している。そんな彼等を見て、僕らも怖くなり、どう対処すべきか良く分からないけれども、バックパックやストックを少し離れた場所に置いて、雨があたりにくい場所で、雷と雨が終わるのを待った。1時間もしないうちに、雨が小雨となり、雷も止んだので、またトレイルを歩きだす。一日中降るというよりも、夕方近くになると、雷を伴った雨雲が発生する夕立のような感じが近いのかもしれない。

今日は予想以上に歩けてしまった。レッズメドウを過ぎて、ようやくハイカーというものが分かりはじめてくる。レッズメドウの先を目指すのは、ほぼ全員がハイカーだ。これまでのような観光地というよりも、シエラネバダの奥深く、JMTを歩く事を目的としている人々ばかりだ。ハイカー同士の連帯感というか、共有出来る意識のようなものを感じはじめる。レッズメドウを越えたあたりから、本当の面白さを実感しはじめたようにも思う。

パープルレイクのほとりを今日の宿泊地とする。雨雲もじきに抜けて、きれいな夕焼けをみながら過ごした。対岸には別のハイカーが宿泊し、夜遅くまで釣りをしていた。どうにか当初目的としていたゴールを目指せるかもしれない。

行動距離28km

8.23.2011

JMT Section Hike 5日目

2010. 7/14
今日はレッズメドウを目指す。レッズメドウは、トゥオルミーメドウのように道路と隣接した、JMTの起点となる場所だ。(*バスに関してはまだ未確認です。)バスもあれば、売店、食堂、キャンプ地が整備されている。そして、なによりも楽しみにしているのが、ここには、無料の温泉施設があるのだ。
日本のような湯船があるわけではなくシャワーなのだが、ずっとお風呂に入っていない自分たちがこの温泉シャワーをどれだけ楽しみにしていた事か。そして、レッズメドウまでのトレイルは、JMTのハイライトの一つとして、サウザンドアイランドレイクをはじめとした、無数の湖を繋ぐトレイルでもある。もし、JMTに3日間しか歩く事が出来ない。という方がいるならば、僕は、レッズメドウと、トゥオルミーメドウとを繋ぐコースを歩かれる事をお勧めしたいとも思う。

バーナル・ピーク。この下に、サウザンドアイランドレイクが広がっているはず。
サウザンド・アイランド・レイク。アンセルアダムスをはじめとした数多くの写真家が、ヨセテミの美しい景色と共に撮っている場所が、この湖とバーナルーピークとのセットだ。有名な湖なだけに、うるさい若者の集団など、少々ハイカーとは異なる観光客もいた。その他、フライフィッシングを楽しむ人々もいる。僕たちも先を急ぎながらも、はじめてここで、日本から持ってきたルアーを取り出して釣りをしてみる事にした。釣りは正直経験が無い。経験が無いというのは嘘にはなるが、小さな子供の頃にやった事しか無く、すっかり忘れている。どうやって釣り竿を組み立てるか、糸を通すかをなんとか手探りで思い出しながら、どうにか準備が出来た。湖に、何度か失敗しながらもルアーを投げ込む。次にリールを巻くんだな。と思いながらリールを巻く。するとすぐに、魚が寄ってきて、あっけなく釣れた。多分ブラウントラウトだ。加藤さんの本にも入れ食いだと書いてあったが本当だった。ルアーを投げる。トラウトが釣れる。あまりにもあっけなく釣れるものだからびっくりしてしまった。先を急ぐ事もありトラウトは全て湖にリリースした。


実はカメラのバッテリーの予備を忘れてしまった。確かこのあたりで残量が減り始めて、ここから写真の数が極端に減り始める。帰ってきてから確認をすると、ハイライトであるはずのこの区間の写真が一枚も無かった。多分一つは、あまりにも楽しすぎて、写真を撮り忘れてしまった事。もう一つは、後半はトレイルに蚊が多く、半分発狂状態でトレイルを駆け下りた事。蚊が多い、少ないは、場所もあるが時期の問題も大きいとは思う。総じて、残念な事に水場のきれいな場所には蚊は多い...。

アイランドパスから、レッズメドウまで、山を越えると、すぐにまた見事な湖が現れる。サウザンドアイランド・レイクを越えて、すぐに、Emerald Lake、Ruby Lake、Garnet Lake、少し距離をおいて、Shadow Lake、Rasalie Lake、Gladys Lake、Trinity Lakes、Johnston Lakeと山を越えれば、湖がそこにある。という感じだ。歩く事を最大の楽しみとしたハイキングもすばらしいが、この区間は、どの場所も捨てがたく、気持ちよくキャンプをしている人達をうらやましく思いながら歩いたトレイルだった。このトレイルを釣り竿を持ちながら、ゆっくりと歩くのもすばらしいと思う。問題の蚊も、いる湖もあれば、少ない湖もあった。シエラネバダの絵に描いたような美しいハイライトの連続がこの区間のトレイルだ。



ゴッサマーギア・マリポサ
腰荷重もある程度出来るようにと、昔のオスプレイのウエストベルトを連結して改造した。
このあたりから、今のONEに繋がっている。

湖を全て歩き終えた所で、yumiが疲れきってしまった。レッズメドウにほど近い、ジョンストン・メドウそばの川のほとりで宿泊する事にする。川をはさんで僕ら以外にも2組がキャンプをしている。少し釣りをして、夕焼けを見ながらゆっくりと過ごした。釣りはルアーを根にひっかけたりで、成果は無かった。ここでyumiが気がついたのだけど、映画「リバー・ランズ・スルーイット」の日に照らされてきらきらした感じは、全て蚊だったんだな。と知った。蚊だと知ってしまうとうらみも出るけど、日に照らされた蚊の群れは映画のようにとても美しい存在だった。行程も遅れがちになってくる。yumiもだいぶ疲れている。もしかしたら、予定通りのゴールを迎える事が難しくなるかもしれないと思い始める。

行動距離 23.8km

8.22.2011

JMT Section Hike 4日目

2010. 7/13
  朝早く起きる。肌寒い。薄暗い中、川まで降りて水を汲む。タオルを水に浸して絞り、身体を拭く。気持ちがいい。今日は、昨日の遅れを取り戻すべく、JMTのハイライトの一つ、サウザンドアイランドレイクを目指す。

うれしい誤算だった。ライエルキャニオンは素晴らしく美しい。昨日この場所を歩き抜ける事なく、この場所で寝て起きて、美しい早朝を歩けた事は本当良かった。バンビが走り回る姿をはじめて見て、リスやマーモットがそこら中で遊んでいる。ディズニーの世界そのものの場所、それがライエルキャニオン。

少しづつ日が上がってくる。
途中、はじめてU.L.ハイカーとも出会った。彼等はカップルでULAを背負っていた。
最高に気持ちいい朝だから、笑顔が溢れてくる。トレイルですれ違うハイカーもみんな同じ気持ちに違いない。顔を見れば一目瞭然。
いたるところが、川になっているトレイルを歩いて行く。濡れてもへっちゃら。
遠くに見える雪を抱えたドノヒューパス3368mをまずは越えるべく目指す。
ハイキングのすごい所は、写真のように、遠くに見える山を実際に越えていく事。
暖かい場所もあれば、雪の場所もある。一日の内に四季も渡り歩いて行く事。

峠越えの途中、今朝歩いてきたライエルキャニオンを振り返る。

アッパーライエルの先ではじめての本格的な渡渉を行う。膝ぐらいの深さ。なによりも、雪解け水の冷たさが...痛い。これから雪の世界に向けてさらに高度を上げていく。この先は、確か土屋さんも少しロストした場所と聞いている。はじめに右側から上がるも、沢を越えて、左側にルートを取るコース。大きくトレイルの向きが変わるので、雪でトレイルが埋まっていると分かりにくい。

これは滝ではなく....トレイル。崖沿いに上がっていくトレイルの途中に雪解け水が溢れて滝になっている。


途中から、完全にトレイルが雪に埋まる。けっこう登ってきたよ...本当に。なかなか、ドノヒューパスに着かない。僕たちにとってこの峠がはじめての本格的な峠越えとなった。

ようやく、ドノヒューパス(峠)に到着。峠を越えるとまた違う山の世界が広がる。それは、ヨセミテ国立公園からアンセルアダムス国立公園に入る事も意味する。JMTは、いくつもの国立公園を越えてハイキングをする。峠を越えるたびに、新しい山の世界を体験する。

美しい森が広がるライエル渓谷と対照的な荒涼とした岩の世界。遠くからみると寂しくも感じるも、実際に歩くとこれがまた素晴らしい景色の連続。

途中までトレイルが雪に埋まっているので、焦らず、地形を見ながら下る。雪が溶けた場所も、雪解水でトレイルが沈んでいる。

川を渡渉する事が多くなってくる。流れもそれなりに強い。ハイカーと情報交換をして、どこから渡るといいか情報を得たりもする。

ホースライディングの二人。装備、スタイルもバッチリと揃えています。

ドノヒューパスの上からは分からなかったけれども、アンセルアダムス国立公園は、岩と木と、湖、川が織りなす素晴らしい世界。植生の雰囲気も変わり、新しい場所を歩いていると感じる。川も素晴らしい。サウザンドアイランドレイクを目指すも、力尽き、手前のアイランドパスのほとりを今日の宿泊地にする。二つの湖に挟まれた美しい場所。
向こうには今日越えてきたドノヒューパスが見える。
ここで、昨日トォルミーメドゥで入手した、紙パックの白ワインを開けて飲む。
美味しかった。途中熊の足跡らしきものもあった。夜にはコヨーテの遠吠えが聴こえる。

歩行距離23.8km