7.18.2012

パッキングのヒント

パッキングの基本原則は、重たいものを上に。
背中側に出来るかぎり寄せる事。
効率的に、かつ簡単に出来るパッキング方法をご紹介します。


寝袋を付属のスタッフザックにいれずに直接バックパックに押し込む。


利点1.パッキングが簡単
利点2.ザックの1/3程が寝袋で埋まり、必然的に重たい荷物が上に積まれる。
利点3.寝袋のロフト(注1)があまり潰れない
利点4.腰にあたる部分が寝袋で柔らかくなって背負い心地が良い。
利点5.上に積んだ荷物が寝袋の中に押し込まれる事で、隙間が埋まり、中で荷物がゆれにくい。

そしてなによりもとても背負いやすくなります。
U.L.ザックなどはパッキング次第で背負い心地に雲泥の差が出てきます。
そこがまた面白くて魅了的です。

ロフト(注1):寝袋の温かさの目安で、寝袋に入っているダウンの膨らみや嵩を指す。
寝袋を床に置いた際にダウンの膨らみで寝袋がどれだけの嵩があるかが目安になる。
寝袋はダウンが膨らみ、そこに温かい空気がたくさん封じ込められる事で温かい。ダウンが潰れると、空気が入らず温かくはならない。寝袋を付属のスタッフザックにぎゅうぎゅうに潰して入れると、ロフトも潰れるわけで、寝袋をスタッフザックから取りだしても、ロフトが自然回復するまで温かくはならない。ロフトを潰さないようにパッキングをすれば、バックパックから寝袋を取り出してもすぐに温かく眠る事が出来ます。


方法1 大きな防水のパックライナーに入れる。

SEA TO SUMMIT ウルトラシルパックライナー
縫い目にシーム処理をした基本完全防水のパックライナー


 ニュージーランドで購入したパックライナー。
NZでは大型のポリ袋をパックライナーで使うのが定番。


 山と道の発送用に使っている
少々厚手(0.06mm厚)のポリ袋
パックライナーとして使う)


ウルトラシルのパックライナーは素材強度は高いが、生地へのコーティングと、縫い目をシームテープで補強する事によって防水性を高めているので、使用頻度が高ければ、劣化によって防水性が落ちる事もあると思います。ポリ袋のパックライナーは完全防水で安いのが魅力的ですが、素材強度が低い為に、長くは持ちません。どちらも長所、短所がありますが、完全に防水しようと思えば、寝袋をパックライナーで包んだ上で、さらに別のパックライナーに他の濡らしたくない着替えなどの荷物と一緒に入れるなど二重に使うと安心です。
山と道はウルトラシルのパックライナーとポリ袋を二重で使っています。


方法2 山と道のパッキングの場合


1.マットを4つ折りにして背中側に寄せる。
4つ折りにする事で背中側がより固くなり背負い易くなる。
*折り曲げると折り曲げた跡がつきます。
マットについた折り跡は時間と共にある程度は復元します。
実際は外付けする事の方が多いのですが、
長時間、長期間のロングハイクの時は入れて歩きました。




2.ウルトラシルのパックライナーをざくっと入れる。



3.ポリ袋を入れる。


4.寝袋をどかどかと入れて、ポリ袋の上部をいくつも折り返した上に、
ポリ袋が開かないように、他の濡らしたくない荷物を上に入れて、
パックライナーを閉じる。
その上に食料やテントなどの道具を入れる。


パッキングがとても簡単ですし、パックライナーを二重に使う事で、ほぼ完全に寝袋を水から防ぐ事が出来ます。これでザックカバーを付けずに僕らは歩いています。

バックパックとの相性等などもあると思いますので、ヒントの一つとして参考にしてもらえたらと思います。


7.17.2012

バックパックの背負い方について


ノーマル

スターナムストラップを使って胸骨の気持ちよい位置で背負う。
スターナムストラップは胸の位置にすれば、
胸骨全体を使って背負えるが、
胸骨が締め付けられて苦しくなったら上にずらしたりもする。
山と道をはじめとしたU.L.BackPackは、
基本ショルダーストラップを引張り、
背中上部にぴったりとバックパックをよせて、
肩甲骨でバックパックを背負うように意識してください。


腕の付け根の骨で背負う。

ハイカーズデポの土屋さんに教えてもらった背負い方。
スターナムストラップをぐっと広げて、
胸骨ではなく、腕の付け根の骨で背負う。
同時に、ショルダーストラップを
ぐっとさらにひっぱれるだけ引っ張る。
スターナムストラップをほとんど使わないので
取り外しても良い。
バックパックの荷重が、
肩甲骨と腕の付け根の骨に気持ちよく荷重が出来て
すごく背負いやすい。


他には、ショルダーストラップをゆるめて、
ウエストベルトへの荷重を多くするとか、
様々な背負い方があります。


これがベストという事ではなく、
長時間歩いて疲れたら、背負い方を変えながら
歩いてみてはいかがでしょうか?









7.16.2012

丹沢と堀山の家を振り返って。

僕が初めて丹沢の山を歩いた日の事。


僕がはじめて山にはまり始めていた頃。丹沢の山を巡って、ヤビツ峠から塔ノ岳を経て、大倉尾根を降りていく丹沢の表尾根縦走を歩いた。このトレイルは、東京からすぐに入れるトレイルとして、はじめて来る人に最高の山体験を約束する。山を始めたすぐの自分は、大汗をかきながら、都会が見せてくれない、人が歩く事によって得られる自然と感動の連続に打ちのめされた。山の頂から下界を見ると、東京も横浜も一緒くたに「都会」という固まりに見えてくる。それ以外は山だったり、海だったりする。自分の生活圏を風景の一景として感じた事は、その当時疲れきっていった自分の心にどれだけ大きなゆとりを生み出したのだろうと思い出す。

歩き、塔ノ岳を越えて、下山路で出会ったのがこの堀山の家だった。
疲れた身体を休める為に入った堀山の家は薄暗く、奥には薪ストーブがあり、その隣にあるテーブルには赤と白のブロックチェックのテーブルクロスが敷かれていた。頭を上げると鹿のドクロが飾られていて、天上にはオイルランプが小さく、ほのかに明かりを灯していた。何とも、その空間に入っただけで、僕が好きなセンスを感じた事を憶えている。疲れた身体に、この場所に出会えた高揚感をうれしく思いつつ、ビールを頼んだ。
僕の期待をさらに上書きするように、ビールだけでなく、「おでん」や「枝豆」を食べて。とつまみまでいただいた。ここは山に来る人にどこまでも優しくしてくれる。そんな場を作り出しているのだと良いショックを受けた。温かい堀山の家のお迎えに対して、一杯のビールで「おでん」も「枝豆」も食べ尽くす事は出来ない。薪ストーブの温かさに心の芯までほぐしていただきながら、もう一杯とビールを頼む。さらに一杯。気が付くと、随分と時間が過ぎていて、既に日が暮れはじめていた。ほぼはじめて山に入る初心者の僕は夜に向かいつつある山を下山する事になった。堀山の家は登山口から1時間半程の距離にある。
小屋を出る僕に、堀山の家は鐘を慣らして、帰る僕の帰路を祝福してくれる。じきに暗闇となった。誰もいない。はじめての山で夜を歩く事となった。高揚感は止まっていない。夜の暗闇の中を、何か大きな動物が目の前を横切っていく。白く光る尻が、それがシカだと認識した。やがて雨が降り出した。雨の中ではヘッドライトの光は、雨に遮られて光は遠くまで届かない事をはじめて知った。ヘッドライトはその当時ブラックダイヤモンドの一番小さなライトしかもっていなかった。大倉尾根の下山口の山小屋は山小屋の中を突っ切るようにトレイルが作られている。はじめて歩いた僕は、暗く、誰もいない雨と闇の中、トレイルも良く見えず、本来はその先に実際のトレイルがあるにもかかわらず、そのトレイルを通らず、道を踏み外した。行けば行く程トレイルで無い事を実感しながらも、闇と雨に押されながら前に進んでしまった。森林で働く人が使う、微かな踏み跡をたよりに、それが人が作り出した道である事を信じて進んでしまった。運が良くその踏み跡は道路に繋がっていた。道路に出る頃にはその道がトレイルと外れている事は気がついていた。道路に出て、闇の雨の中、どこに行けば良いのか分からず、一人道を歩き、家を見つけ、失礼ながらドアをたたいた。
「バス亭はどちらにあるでのしょうか?」
今では丹沢のこの道は夜でもヘッドライトの光をあまり灯さずとも歩く事が出来る。でも、はじめて体験したこの夜の事と道を踏みずした事は忘れない。


7.08.2012

アイスランドのロングトレイル

先日ライターでカメラマンの三田さんが取材で家に遊びきました。
夕方から一緒に飲みながらお勧めのPVなどをいくつか見させていただきました。
少年が美しい原野をロングハイクの旅に出るというPVです。






BON IVER "Holocene"


映像を見た印象で、アイスランドのトレイルじゃないかな。と直感的に思いました。
後日調べてみるとやはりアイスランドで撮影をされたそうです。


何故アイスランドのトレイルと感じたのか。
それは以前、アウトドアハックで紹介されていたこの映像を見ていたからでした。




Made in Iceland / Klara Harden 


アイスランドを横断するロングトレイル。
いつか行きたいです。火山はどうなっているのか気になります。




7.06.2012

飯豊残雪期縦走 後半

日の出前に起きた。山は暗く、外に出てみるとまだ山はガスに包まれていた。このままガスが消えなければ歩いてきたトレイルを引き返そうと考えた。

山のガスは日の出と共に消え去る事もある。それに望みを託す事にした。みんなも起き出してくる。現状の暗い状況を共有した。美味しいおじやを食べながら、じっと日が上がってくるのを待つ。

トイレに行く為に、頃合いを見て外に出てみる。少しずつ外が明るくなってきていて、いつのまにか山を覆っていたガスは消えかかっていた。遠くまで飯豊連峰を見渡す事が出来た。言葉にならない高揚を感じて、小屋に戻り、「見えるぞ!!!!!」と言った。何が見えたのか伝わらないと感じたので、「山が見えるぞ!!!!!」ともう一度叫んだ。



最高の天気となった。朝の山の天気は変わりやすいので、天気が変わる前に出来るかぎり進もうと、急いで出発した。








残雪と夏道のミックス。





飯豊山から大日岳の稜線沿いが、まるでナイアガラの滝のように、雲が溢れて流れ出てくる。やがて、飯豊山も出発してきた御西小屋も雲の中に消えた。稜線の向こうとこちらでは、こうやって天気が変わるのだと実感した。出発が1時間遅れていれば、小屋はまたガスの中に消えて、来た道を引き返すにも大変だっただろうと思う。雪もまだ固く締まっていて歩きやく、遠くまで行けると感じた。


稜線に梅花皮小屋が見える。小屋には小屋開けの準備の為に村から人が上がってきていた。管理人さんにお勧めの民宿を教えてもらい、その場で予約してもらった。



梅花皮小屋の前が石転び沢。小屋前の崖はかなり急で、すぐに下を見下ろす事が出来ない。
昔は飯豊連峰に来る大半の人がこの石転び沢の雪渓を歩きに来たというから驚きだ。ピッケルを持ってきていなかったので今回はパスする。落石が危ないらしいが、この早い時期は石が転がる事も無いと後から聞いた。



北股岳を登る。豊嶋さんにステップを作ってもらう。よほど慣れた足付きでないと急斜面だとトレランシューズでは登りにくい。雪はハードシューズか、軽量のピッケルは持っていきたいと思う。


天気に恵まれた事を飯豊の神様に感謝する。






 北股岳からの先の稜線は夏道も多く、お花畑が広がっていた。


 カメラマン豊嶋さん。「花と残雪の山と道」撮影中


走ったり、滑ったり、天上のようなハイクをずっと楽しんだ。





気持ち良いぐらいに滑る。滑る!
危うく、「短パン、Tシャツ、スニーカー、アイゼン無しで滑落死。雪山なのに軽装備、昨今のU.L.登山とは....。」と叩かれる所だった。

残雪期のシャーベット状の雪は怖い楽しい。


下山前に焼豚、餅入り、鹿児島ラーメンを食べる。


1000m程降りるとようやく雪も無くなり夏山となった。山小屋では「途中民宿に電話をして迎えを呼んでもらいなさい。」と聞いていたけど、ドコモの携帯電話は下山しても通じなかった。民宿まで1時間程歩く事になるのかと思っていた所.....なんと下山口に止まっている車に宿の名前が書いてある事を発見する。まさかと思いつつもノックすると、中から「遅いよ。」「5時間くらいで降りてくると待っていたよ(笑)」と民宿の旦那さんが出てきた。標準タイムで小屋から下山口まで7時間以上かかる道。途中お昼を食べていたので、結果2時間ぐらい待たせてしまった事になる。旦那さんはマタギで、地元の山岳救助隊員でもあるとの事。


民宿「奥川入」は良い宿だった。温泉では無いけれども、お風呂からは、飯豊連峰と田んぼが見渡せる景観。地の物の料理は豪勢。人気の宿らしくお客さんでいっぱいだった。宿に泊まった常連さんに、その日釣った岩魚をごちそうになり、遅くまでお酒を飲んだ。
また訪れたいと思う良い宿だった。

ハイクを終えてみると、豊嶋さんと僕のバックパックに小さな穴が空いていた。
残雪期の飯豊。念願だった美しい最高の飯豊を味わう事は出来た。

帰りには宿のお客さんに駅まで送ってもらい、時間もあったので、米沢で降りて、酒蔵を周り、東北の旅を終えた。