1月3日
ばたばたと移動をし続けて、少し疲れていた。
そんな僕らにとって、テ・アナウという街の大きさ、静けさは、とても心地が良かった。夜に飲んだワインがとても美味しかったので、出発する日の午前中にスーパーでワインを購入し、750mlのペットボトルに詰め替える。ニュージーランドのワインは来る前からとても楽しみにしていた。今日から入るのはケプラートラック。
ケプラートラックは、山岳ハイクが出来るグレートウォークとして有名。60kmの周遊トラックで、3日もしくは4日で回る事が多い。僕たちは、キャンプ指定地の問題もあり、午後にゆっくりと出発して四日で歩く事にした。通常のトランピングトラックでは、キャンプに関しては大体自由にする事が出来るが、ケプラートラックなどのグレートウォークは、他のトラックと差別化されていて、キャンプも指定地のみ。山に入るには山小屋、テントを事前にDOCで予約をしなくてはいけない。なぜはじめにケプラートラックを歩く事にしたのか。出来たばかりのTe araroaと有名なグレートウォークを歩き比べたかったという事が一つ。出発前に膝を悪くしたので、道も歩きやすいだろうと思われるケプラートラックで、足を慣らしたかったというのが二つ目。三つ目に街から入れる周遊トラックとしてアクセスが良かった事にある。
ケプラートラックには、街から歩いて行く。トラックヘッド(登山口)まで有料のシャトルバスが出ているけど、予約が必要だったりで面倒くさい。(午前中の便は定時に出発する。)山までせっかく歩いて入れるのだからと、湖畔沿いに1時間程歩いていく事にした。湖の水量をコントロールするコントロールゲートが入口になる。良く整備されたトラックを2時間程歩くと、すぐに1日目のキャンプ指定地「Bord Bay Campsite」に到着した。
このキャンプサイトは、トイレはあるが水は湖から汲んでくる。テ・アナウの街から対岸にあり、水上ボートにのって、たくさんの観光客が夏を楽しんでいる。水着でバーベキューなどを楽しむ家族やカップルがいるただ中に、山スタイルの僕たちは正直浮いている。タープを張る気にもなれずに、観光客が帰っていく時間まで、少し離れた場所でのんびりとしていた。
そうすると、一組、また一組と少しずつ山クラスタの人達が増えてくる。ニュージーランドのトラックには世界各国から人がくる。年齢も様々で、はじめて山に入るような人達から、本格的な装備の人まで様々だ。場所が空いているのに、僕たちが張っているタープのすぐ横に学生らしき集団がテントをはりはじめたのには少しまいった。夜にはキツネに似た、ポッサム(あたたかいポッサムダウンで有名な?)という動物が現れて、となりの学生集団の食料を取ったらしく、騒々しい1日目の夜となった。
1月4日
翌日、山を登りはじめる。山の稜線に出ると、一気に景色が広がり感動する。氷河が作り出したフィヨルド地形の壮大な山々や湖、どこまでも広がる自然の景色を見る事が出来る。正直、ここまでは退屈なトレイルだと思っていた。ここがたかだか2000mも無い山とは信じられない。日本でいうとアルプスの縦走ルートのような雰囲気がある。
稜線沿いを歩いているとじきに、Luxmore Hutに着く。
Luxmore HutからLuxmore Caveという鍾乳洞に行く事が出来る。僕たちは残念な事に、すっかりとその事を忘れていて下山後にくやしい思いをした。
Luxmore Hutの水洗トイレ。山小屋に水洗トイレがある事に大変驚いた。そしてすごくきれい。
眼下には湖が取り巻き、フィヨルド地形が広がる。
途中2カ所にシェルター(避難小屋)がある。日本の避難小屋と同じ雰囲気。風も強い。
山岳地のみに生息するケーアというオウムのような鳥。この鳥が大変賢く、人に興味を持ち、人のテントをやぶったりとか、靴を盗むとか、大変やっかいだと聞く。山で会った方から聞いた所によると、バックパックのジッパーを自ら開けてクッキーを袋ごと持っていかれた事があると聞いた。また、ジッパーの開け方を子供の鳥に伝授していたとも聞いている。
山岳トレイルを歩き終わり、Iris Burn Hutに向けて降りていくと、森全体がヒゲをはやしたような不思議で幻想的な雰囲気の森を通る。様々な苔の美しさはニュージーランドならではの美しさかもしれない。
苔そして、巨大なシダ植物、巨木が織りなす原始的な森。ケプラートラックは60kmの距離の中で、山岳から、幻想的な森、湿原、湖など、様々な美しい景色が気持ちよく変わっていく。山の楽しさがぎっしりと凝縮されている。
Iris Burn Hutに到着してタープを張る。山小屋は人も多く、メインのテント場は一杯だったので、少し離れた所に張った。夜は雨と風が強く、タープのペグが外れる事があった。ニュージーランドは湖のそばなど風が強い箇所も多く、タープで無い方が良いかもしれない。水はタンクの他に川で汲む事が出来る。基本セイシェルの浄水器で濾過した。
ニュージーランドの山々にはサンドフライと呼ばれる小さなブヨが大量にいる。
この場所もとても多くて、ヘッドネットをしていないときつかった。アメリカの蚊のように、服の上から刺してくる事は無いので、服やタイツなどを身につけてネットをかぶっていればそんなに刺される事は無いが、辟易する...。
1月5日
朝、小雨が降ったり止んだりしている中、霧が立ちこめ、きれいな虹が現れた。
草原や湿原を歩いていくと雨も上がる。三つ目の小屋「Motuaru Hut」に到着する。
ここで、ケプラートラックから外れて、Shallow Bayに向かう。
まるで、海のような湖。静かで本当に美しい。体の汗を洗う為に少し泳いでみた。
途中、僕らのバックパックやタープなどに興味を持ってくれて声をかけてくれたオーストラリアのギアマニアの3人組(男性一人はテントでお休み中)に会った。彼等のバックパックはニュージーランドの国産ブランドaarn、男性はGoLiteのJAMを使っていた。テントはTERRA NOVA のLaser Photon Eliete。彼等のような軽量性や、ギアにこだわっている人はほとんどいなかったように感じる。基本みんなヘビーウェイト。お店に売っていないのだから仕方が無いのだけど...。彼等に聞いたらオーストラリアから海外通販で購入していると言っていた。
僕らのスタイルにとても興味を持ってくれて、バックパックの軽さとフィッティングの良さにとても驚いてくれた。うれしい。オーストラリアで展開しないのか?と聞かれたので、「将来に」と答えた。
リゾットを炊く。ウッドストーブとしても使えるトレイルデザインのストーブはとても使い勝手が良かった。
Shallow Bayは、たまたまかもしれないが、僕らがタープを張った所には奇跡的にサンドフライがいなかった。本当に美しい場所なので、ケプラートラックに入るならぜひ、泊まる事をお勧めしたい。この時間で夜の10時頃になる。
1月6日
テ・アナウの街に戻ると、偶然オーストラリアの3人組に会った。
どこに泊まっているのかと聞いてみると同じYHAだと言う。面白い巡り合わせだと思った。
ケプラート・トラックを歩き終えて、yumiはTe araroaよりも断然ケプラー・トラックが良いと言う。観光客も少なく人を突き放したようなTe araroaやトランピングトラックが僕は好きだけど、このトラックは一度歩いてみる事をぜひお勧めしたい。ものすごく完成度の高いトラックだと思った。二泊でテント泊で回るなら、僕らが歩いたのと逆ルートで、僕らがはじめに泊まったBord Bay Campsiteは抜いてしまっても良いと思う。ニュージーランドの夜は10時頃まで明るいので、時間はかかっても明るいうちにテ・アナウに着く事が出来る。
Shallow Bayは、ケプラートラックから外れるので、無料・無許可でテントを張れる。有料なのはIris Burn Hutのみになるので大変お得だ。