11.22.2012

北アルプス9日間 親不知〜上高地 DAY3

 DAY3

3時起床。今日は標準コースタイムで16時間という今回のハイクで一番の長丁場になるので、早く歩き出さなくては行けない。とはいえ、頭が起きてこない。
とりあえず、真っ暗の中アルコールストーブに火を付けてお湯を湧かす。


みそ汁と残った御飯を混ぜてねこまんまを作る。これが美味しかった。ぼーとした頭が少しずつ起きてくる。 裸足のまま外を歩いて水を汲みに行く。足裏が気持ちよい。
テントを撤収して風吹く夜を歩きはじめた。



 朝日岳を巻いて白馬岳を目指す。1時間程歩いていると少しずつ明るくなってきて、遠くに白馬岳をはじめとした北アルプスの尾根が見えてくる。



雪倉岳へ登りはじめた頃には日も上がり、気持ち良く山々を見渡す事が出来た。


昨晩の湿気でテントがかなり結露したので、バックパックに外付けして乾かしながら歩く。日が出て来るとあっというまに乾いた。濡れたままだと重たいし、次に使うときに気持ちよくないので、太陽の下で一瞬のうちに乾いてくれるのはうれしい。



雪倉岳を越えると北アルプスらしい気持ち良く美しい稜線が広がる。歩き続けていると太陽も高くなってきた。稜線は森の中のように太陽を遮るような遮蔽物も少ない。太陽の強い光を直接浴び続けているとまぶしくて疲れてくる。たくさんの水も飲みたくなる。そこで、傘を差して気持ち良く歩いた。ちょうど風も強くなかったので、風で飛ばされる事も無い。シルバーコーティングされたこの傘は、差すだけで木蔭にいるような感じになる。暑い日には体感温度が−5°くらい変わるように感じる。太陽の日差しは思った以上に体力を消耗するので、傘で影を作りながら歩くだけでだいぶ疲れ方が変わる。ただ、傘が光を反射する関係で遠くからも目立つ。すれ違う多くの方に、遠くからも目立ってましたよ。と言われると少しドギマギともする。それでもこの快適さはもっと多くの人に知って欲しいとも思う。


はじめて白馬大池から白馬岳を目指したときに、三国境から眺める雪倉岳方面の尾根の山々がなんだかすごく遠くて、この山に向かう人はいったいどこまで歩くのだろうと漠然と感じた事を憶えている。今回三国境を越えた所でその当時に感じた事を思い出した。
 三国境が一つの区切りかもしれない。三国境をこして白馬岳に向かう稜線を歩いているとなんだか人の感じも変わって落ち着かないのだ。


 白馬岳の頂上には歩き始じめてから7時間程かかって11時頃に到着した。
新田次郎の強力伝で有名な展望図指示盤を眺めつつ山頂でゆっくりとしようと考えてはいたけれでども、なんだか落ち着かなくて、そそくさと写真を1枚だけ撮って歩き出した。住んでいる鎌倉の田舎から東京に出てきたような落ち着かない感じ。逆を言えば、それだけ、栂海新道からの登りが自然との繋がりが強くて良かったという事かもしれない。



落ち着かないといっても腹は減る。楽しみにしていた白馬山荘のお昼御飯にありつく。
白馬山荘は本当に大きい。レストランも広くて展望も美しくホテルのような 雰囲気がある。迷ったあげくに毎日食べているはずのカレーをまた選んでしまった。やはりカレーの魅力には勝てないようだ。これが本当に美味しかった。

小屋では衛星の携帯電話を貸してくれるサービスがある。受付で電話を借りて、順調にハイクが進んでいる事を報告する。
 正直な所だいぶ膝にもきていた。このまま進むよりも白馬岳で一泊して膝を休ました方が良い気もしたけれども、お腹もいっぱいになり、すぐにでも逃げ出したいという気持ちが強かったので、このまま清水尾根へと向かう事にした。


 白馬小屋から清水尾根へ向かう途中で老夫婦に道を訪ねられた。白馬鑓温泉へと続く道を示しながら、遠くに槍ヶ岳が見える事をお伝えすると、心の底から感動をされていた。人生を振り返るような重みのある感動がそこにあった。ある人にとっての槍ヶ岳や白馬岳、そして剱岳などの名山がどれだけ大きな価値があるものなのか...。老夫婦の感動を受けて良い気持ちのまま清水尾根へと入っていく事が出来た。



清水尾根は一転して人の気配がまったく感じられない。静かすぎるぐらい。



 所々薮をかき分けながら進む。遠くに唐松岳や五竜、鹿島槍を見ながら、美しい尾根を歩いた。お花のシーズンは静かに素晴らしいハイクが出来る事と思う。予想通りの良いトレイルだった。歩いていた時間も関係すると思うけど清水尾根では誰一人会う事は無かった。


 日が沈み暗くなってくる。川の音が聴こえ始めたので、もうすぐ下山が近いと知る。真っ暗になる寸前に清水尾根から下りる事が出来た。祖母谷温泉には19時に到着。朝の4時前から歩き始めて15時間程。ほとほと疲れた身体に最高の温泉が待っている。祖母谷温泉は24時間いつでも入る事が出来る。しかもテント場の真横にある。

つづく