11.09.2012

第二回鎌倉ハイカーズミーティングを振り返って2


宿泊系について

僕自身も普段は床が無いシェルターやタープ、ツェルトを愛用している。
テントではないU.L.系幕を使う理由は下記の通り。

1)圧倒的に軽い
2)設営、撤収が楽
3)使いやすい

これらU.L.系宿泊道具の良さを伝えていただくにあたり、宿泊系基本講習と講座を、細田BB(以下BBさん)さんにお願いさせてもらった。


BBさんはハイカーサコッシュの産みの親にあたる。サンフランシスコ在住時にJMTの情報をブログを通じて発表されていたり、ハイカーズデポの土屋さんが、その当時1月間かかると思われていたJMTをU.L.スタイルでわずか14日でスルーハイクされたときにもサポートされていたと聞いた。ハイカーズデポのタープ講習でも講師を務められた方だ。

イベント当日、切り開いたばかりの山の中腹がBBさんの講習場所となった。
BBさん私物のタープ、ツェルト、ビビィ、テント、ゴーライトがはじめに商品化をしたというRayWayタープやシックスムーンデザインのゲイトウッドケープなどの名品が並んだ。



BBさん指導の元、お客様のスキル、興味を元に、大きくグループを分けながら、それぞれの道具の説明を短所、長所を交えながら進めていった。


実際にタープを立てる講習も行う。


テントと比べて、U.L.系道具が優れている点において、BBさんは安全という事に注目して講習、講座と話を進めていく。テントは安心感があるが安全では無い。

テントの弱点
1)幕で覆う事によって、外界から遮断されて、天気の変化や環境の変化に気がつくのが遅れる。
2)撤収に時間がかかる事から、危険を察知しながもそこから移動する気になかなかなれない。

実際にタープとテントの撤収時間を比べてみたりもした。タープは、今回はじめてタープに挑戦したお客様が撤収をしてみる。テントは僕とお客様の二人がかりで撤収をする。結果圧倒的にタープの方が撤収が早かった。この早さ、手軽さが、幕を張った後、天候が悪化した際に、撤収するか留まるかの判断に影響するだろうと。BBさんは話を進めた。
 またタープは最初は慣れるまでに時間はかかるが、誰にでも張れる事を示し、一度張るコツをつかめば、設営に関してもテントよりも早い事をその場で実践して示してくれた。

U.L.系道具が心配になるほど天候が悪化するのであれば、さっさと撤収して、3時間程歩いて安全な所まで移動するのが肝心との事。

またビビィ(頭まで覆えるシュラフカバーのような幕。防水性の素材で出来ているビビィは、それ単体で外で寝る事が出来る。180southにおいて、イヴォンシュイナードがパタゴニアの高山で使用していた。)は、どこにでも眠れる事が大きな利点だと教えてくれた。

出来るかぎり安全な場所、暖かい場所を選んで眠る事の重要性。それらを積極的に行う事が出来るのがU.L.系幕とくにビビィの有効性だと強調されていた。

厳冬期に関しては、BBさんも自立式のテントを持っていかれるが、雪が残る残雪期からはU.L.系幕を使われるとの事。雪が残るときでも、露出した岩の上や、大きな木の裏などは暖かく雪が解けている事も多いので、そのような場所を狙ってビビィで眠るらしい。

また水場の近くはよく冷えるので、眠る場所としてはあまり適しないとの事。
暖かい場所を選んで眠る事によって、持って行く道具もより軽量化出来ると教えてくれた。


夜の講座では、安心と安全の違いを説明しながら、自分自身が道具に求める内容をマトリックスにして点数を付ける事を勧められた。BBさん自身が行ってみると、タープが一番適している道具という結果になった。また、タープの弱点はビビィと併用する事で解消される事など。 

「安心」は怖い恐怖に対して目をつぶる事と同義で、けっして「安全」では無い。軽さばかりが注目されがちなU.L.系道具の利点をこのような切り口で説明をしてくれたBBさんの宿泊系講習、講座は僕自身大変勉強になった。素早く設営が出来る。撤収が出来る身軽さは、山の変化に対して素早く対応が出来る事に繋がる。山での安全性は自分自身が自然と向き合う姿勢、すぐに退避が出来る身軽さが大事だと教わった。

僕自身JMTを歩いていたときに、急な豪雨にやられた際、素早くタープを張って、アルコールストーブに火をともして、濡れた身体を暖め、小降りになったらさっと撤収して歩きはじめた事を思い出した。これがテントならどうだっただろう。トレイルの途中で張る気になっただろうか...。

またBBさんの話が大変面白く笑いが多かった事もお伝えしておきたい。
当日BBさんが発表された資料宿泊系基本講座」はコチラから見ていただく事が出来ます。

*U.L.系幕が通常のテントに対して大きな安全性を持っているという話ではありません。
道具の優劣ではなく、使う人間が自然と向き合う事の重要性が大事という話になります。
U.L.系幕は撤収、撤退のしやすさ、自然との距離感において優れている道具といえると思います。自分自身が自然に対して立ち向かえないような状況化(ふきっさらしの稜線など)は風、雨に強い幕を使うか、自然環境が変化した際には小屋を使うと良いと思います。個々人の経験値にあわせてご判断ください。(予測出来る際にはそれそうおうの準備を。まずいときには行かないという判断が大事です。)