はじめてU.L.ハイクに行ったのは八ヶ岳だった。
ちょうどその前に、念願だった雲の平にいくために、連休を使い、折立から薬師岳を経て、雲の平、西鎌尾根、槍ヶ岳、上高地までソロで4泊5日の縦走を行った。新宿や渋谷を思わせるような人の多さを除けば、すばらしい景色の連続だった。ただ、装備の重さにひきづられて、感動を心で体現したいと思っても、どうにも身体が動かしずらい。重たい装備を背負う事に誇らしさを感じたときもあったが、それでも、この場所がもたらす感動を身体が受け止められていない現実に、少し困惑した。途中、何度か、小屋泊の軽量装備の人々に抜かれていく。とても気持ち良さそうだった。
そして、4日目の小雨で霧がかった西鎌尾根を、誰もいない中、ゆっくりと歩いていく僕を、トレイルランナーのカップルが軽やかに抜きさっていった。霧の中で全体的にグレーで岩しか見えない中、そのトレイルランナーがとても美しく感じられた。
下山後、アルコールストーブとすぐにシルタープを買った。バックパックは普段使いしていたブラックダイヤモンドのRPMに、入りきらない荷物を外付けして、八ヶ岳に向かった。
パックウェイトは確か一泊二日で4kg程だったと覚えている。はじめて張るタープに手こずりながらも、タープの下で、静かにアルコールストーブに火を付け、パンやチーズ、ハムを食べる。ときおりウィスキーを流し込む。半分寝袋に入った身体を横にすれば、暗闇に消えて行く森が見える。アルコールストーブは、ガスストーブのように火の調整が出来ないかわりに、火を起こしている感じがする。火がとても貴重に感じるのだ。
そして、そのまま、自然の中で眠る。
夜明け前に起きれば、自分が森の中にいる事を実感する。自然と自分を遮るものが無い原始的な喜びに心が満たされている。
タープを撤収し、朝日を見ようと、赤岳を目指して、夜明け前の一番暗い夜を月明かりの下登っていく。
自然の中にいる感じがずっと途切れる事なく、心も身体も外に繋がっている感覚。
夜明け前の赤岳頂上はガスに包まれてしまった。
朝日を見ることは出来ないなと諦めて、稜線を歩きはじたときに、日の出が始まった。
唐突に太陽が現れた瞬間、みるみる内に、ガスが晴れていく。全てがグレーだったのに、まるでアニメーションを見ているように、壮大な景色へと変貌を遂げていった。
光は、反対の雲に自分の影を写し、ブロッケン現象を作り出す。自分の影を中心にいくつもの虹が取り囲み、僕の影が大きな光の輪を背負っているみたいに見えた。
心が感じるままに、身体を動かしていく。どこまでも、どこまでも、歩いていくことが出来る。ときどき走ったりもした。
自然の奥深い場所で、ただシンプルに、原始的な喜びと、身体の外と身体の内側を繋げる事が出来る。U.L.ハイクは、僕が自然に求めていた事を具現化してくれたような気がした。
それまでのハイキングを振り返ると、まるで都会を自然の中に持ってきているような恥ずかしさを少し感じてしまう。その日は、心の赴くままに、麦草峠まで一気に午前中に駆け抜けてしまった。
ジャック・ケルアックが、ゲイリー・シュナイダーとシェラ山脈のハイキングに行ったときの話で、ジャフィー(ゲイリー・シュナイダー)は言う。「山へ行くときに第一に心がけなきゃならんのはね。目方を出来るだけ軽くしとくこったよ。」(禅ヒッピー/ジャック・ケルアック)
当初は、U.L.ハイクはなんてストイックで、なんでそこまでするのか、疑問にも思っていたが、今になってみると、バックパッキング全盛時代も、その前の時代も、自然の中を歩く旅で心がけてきたことが軽くするということだったんだな。と知った。夏目)
ちょうどその前に、念願だった雲の平にいくために、連休を使い、折立から薬師岳を経て、雲の平、西鎌尾根、槍ヶ岳、上高地までソロで4泊5日の縦走を行った。新宿や渋谷を思わせるような人の多さを除けば、すばらしい景色の連続だった。ただ、装備の重さにひきづられて、感動を心で体現したいと思っても、どうにも身体が動かしずらい。重たい装備を背負う事に誇らしさを感じたときもあったが、それでも、この場所がもたらす感動を身体が受け止められていない現実に、少し困惑した。途中、何度か、小屋泊の軽量装備の人々に抜かれていく。とても気持ち良さそうだった。
そして、4日目の小雨で霧がかった西鎌尾根を、誰もいない中、ゆっくりと歩いていく僕を、トレイルランナーのカップルが軽やかに抜きさっていった。霧の中で全体的にグレーで岩しか見えない中、そのトレイルランナーがとても美しく感じられた。
下山後、アルコールストーブとすぐにシルタープを買った。バックパックは普段使いしていたブラックダイヤモンドのRPMに、入りきらない荷物を外付けして、八ヶ岳に向かった。
パックウェイトは確か一泊二日で4kg程だったと覚えている。はじめて張るタープに手こずりながらも、タープの下で、静かにアルコールストーブに火を付け、パンやチーズ、ハムを食べる。ときおりウィスキーを流し込む。半分寝袋に入った身体を横にすれば、暗闇に消えて行く森が見える。アルコールストーブは、ガスストーブのように火の調整が出来ないかわりに、火を起こしている感じがする。火がとても貴重に感じるのだ。
そして、そのまま、自然の中で眠る。
夜明け前に起きれば、自分が森の中にいる事を実感する。自然と自分を遮るものが無い原始的な喜びに心が満たされている。
タープを撤収し、朝日を見ようと、赤岳を目指して、夜明け前の一番暗い夜を月明かりの下登っていく。
自然の中にいる感じがずっと途切れる事なく、心も身体も外に繋がっている感覚。
夜明け前の赤岳頂上はガスに包まれてしまった。
朝日を見ることは出来ないなと諦めて、稜線を歩きはじたときに、日の出が始まった。
唐突に太陽が現れた瞬間、みるみる内に、ガスが晴れていく。全てがグレーだったのに、まるでアニメーションを見ているように、壮大な景色へと変貌を遂げていった。
光は、反対の雲に自分の影を写し、ブロッケン現象を作り出す。自分の影を中心にいくつもの虹が取り囲み、僕の影が大きな光の輪を背負っているみたいに見えた。
心が感じるままに、身体を動かしていく。どこまでも、どこまでも、歩いていくことが出来る。ときどき走ったりもした。
自然の奥深い場所で、ただシンプルに、原始的な喜びと、身体の外と身体の内側を繋げる事が出来る。U.L.ハイクは、僕が自然に求めていた事を具現化してくれたような気がした。
それまでのハイキングを振り返ると、まるで都会を自然の中に持ってきているような恥ずかしさを少し感じてしまう。その日は、心の赴くままに、麦草峠まで一気に午前中に駆け抜けてしまった。
ジャック・ケルアックが、ゲイリー・シュナイダーとシェラ山脈のハイキングに行ったときの話で、ジャフィー(ゲイリー・シュナイダー)は言う。「山へ行くときに第一に心がけなきゃならんのはね。目方を出来るだけ軽くしとくこったよ。」(禅ヒッピー/ジャック・ケルアック)
当初は、U.L.ハイクはなんてストイックで、なんでそこまでするのか、疑問にも思っていたが、今になってみると、バックパッキング全盛時代も、その前の時代も、自然の中を歩く旅で心がけてきたことが軽くするということだったんだな。と知った。夏目)