7.06.2012

飯豊残雪期縦走 後半

日の出前に起きた。山は暗く、外に出てみるとまだ山はガスに包まれていた。このままガスが消えなければ歩いてきたトレイルを引き返そうと考えた。

山のガスは日の出と共に消え去る事もある。それに望みを託す事にした。みんなも起き出してくる。現状の暗い状況を共有した。美味しいおじやを食べながら、じっと日が上がってくるのを待つ。

トイレに行く為に、頃合いを見て外に出てみる。少しずつ外が明るくなってきていて、いつのまにか山を覆っていたガスは消えかかっていた。遠くまで飯豊連峰を見渡す事が出来た。言葉にならない高揚を感じて、小屋に戻り、「見えるぞ!!!!!」と言った。何が見えたのか伝わらないと感じたので、「山が見えるぞ!!!!!」ともう一度叫んだ。



最高の天気となった。朝の山の天気は変わりやすいので、天気が変わる前に出来るかぎり進もうと、急いで出発した。








残雪と夏道のミックス。





飯豊山から大日岳の稜線沿いが、まるでナイアガラの滝のように、雲が溢れて流れ出てくる。やがて、飯豊山も出発してきた御西小屋も雲の中に消えた。稜線の向こうとこちらでは、こうやって天気が変わるのだと実感した。出発が1時間遅れていれば、小屋はまたガスの中に消えて、来た道を引き返すにも大変だっただろうと思う。雪もまだ固く締まっていて歩きやく、遠くまで行けると感じた。


稜線に梅花皮小屋が見える。小屋には小屋開けの準備の為に村から人が上がってきていた。管理人さんにお勧めの民宿を教えてもらい、その場で予約してもらった。



梅花皮小屋の前が石転び沢。小屋前の崖はかなり急で、すぐに下を見下ろす事が出来ない。
昔は飯豊連峰に来る大半の人がこの石転び沢の雪渓を歩きに来たというから驚きだ。ピッケルを持ってきていなかったので今回はパスする。落石が危ないらしいが、この早い時期は石が転がる事も無いと後から聞いた。



北股岳を登る。豊嶋さんにステップを作ってもらう。よほど慣れた足付きでないと急斜面だとトレランシューズでは登りにくい。雪はハードシューズか、軽量のピッケルは持っていきたいと思う。


天気に恵まれた事を飯豊の神様に感謝する。






 北股岳からの先の稜線は夏道も多く、お花畑が広がっていた。


 カメラマン豊嶋さん。「花と残雪の山と道」撮影中


走ったり、滑ったり、天上のようなハイクをずっと楽しんだ。





気持ち良いぐらいに滑る。滑る!
危うく、「短パン、Tシャツ、スニーカー、アイゼン無しで滑落死。雪山なのに軽装備、昨今のU.L.登山とは....。」と叩かれる所だった。

残雪期のシャーベット状の雪は怖い楽しい。


下山前に焼豚、餅入り、鹿児島ラーメンを食べる。


1000m程降りるとようやく雪も無くなり夏山となった。山小屋では「途中民宿に電話をして迎えを呼んでもらいなさい。」と聞いていたけど、ドコモの携帯電話は下山しても通じなかった。民宿まで1時間程歩く事になるのかと思っていた所.....なんと下山口に止まっている車に宿の名前が書いてある事を発見する。まさかと思いつつもノックすると、中から「遅いよ。」「5時間くらいで降りてくると待っていたよ(笑)」と民宿の旦那さんが出てきた。標準タイムで小屋から下山口まで7時間以上かかる道。途中お昼を食べていたので、結果2時間ぐらい待たせてしまった事になる。旦那さんはマタギで、地元の山岳救助隊員でもあるとの事。


民宿「奥川入」は良い宿だった。温泉では無いけれども、お風呂からは、飯豊連峰と田んぼが見渡せる景観。地の物の料理は豪勢。人気の宿らしくお客さんでいっぱいだった。宿に泊まった常連さんに、その日釣った岩魚をごちそうになり、遅くまでお酒を飲んだ。
また訪れたいと思う良い宿だった。

ハイクを終えてみると、豊嶋さんと僕のバックパックに小さな穴が空いていた。
残雪期の飯豊。念願だった美しい最高の飯豊を味わう事は出来た。

帰りには宿のお客さんに駅まで送ってもらい、時間もあったので、米沢で降りて、酒蔵を周り、東北の旅を終えた。